著者
永沢 勝雄 佐藤 三郎 石渡 英夫
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.17-24, 1954-09-30

桃果実の保護の目的をもつて実施されている袋掛が果実の着色,硬度,果皮の厚さ,果実の成分などにいかなる影響を及ぼしているかを明らかにし,無袋果実が有袋果実にくらべ,実用的価値においてすぐれている点の多いことを知つた.各特性について比較して得た結果の大要は次のようである.1.果実の紅色色素の発達程度は品種によつて差があるが,有袋・無袋両区間の差異も品種によつてちがつた状況を示す.着色程度のちがいによつて次の4群に類別した.a)有袋・無袋両区の間に着色程度に差があり,有袋果では色つきが悪いが,無袋ではどす黒い程度の濃紅色を示すもの……伝十郎,白鳳,土用,橘早生などb)有袋・無袋両区の間に着色に差があるが,有袋果は色つきが悪く,無袋果でもそれほどひどい濃紅色を示さないもの……離核,岡山500号など c)有袋・無袋両区の間に着色の差がひどくなく,有袋でもある程度の着色を示し,無袋果でも相当程度の着色を示すもの……旭,スイカ桃,天津,昭和,大久保など d)有袋・無袋両区の間に着色の差がひどくなく,有袋でもある程度の着色を示すが,無袋でもあまり着色せず,商品価値を損ずるほどでないもの……早生玲紅,佐五平,日月などしたがつて,無袋果でも外観がひどく劣変しない品種としては,旭,早生玲紅,佐五平,日月,昭和,大久保,スイカ桃,天津などがあげられる.2.果実の硬さは有袋・無袋によつてそれほど大きな差異を示さないが,がいして無袋果の硬度が減少する傾向を示している.3.果皮の厚さは無袋果の方が有袋果より厚くなつている.4.糖分含有量は無袋果の方が有袋果より10%内外多くなつている.5.果実内の酸の含量は無袋果が有袋果よりいく分少いようであるが,その差はあまり大きくない.6.果実内ビタミンC含量は無袋果の方が有袋果より10%内外増加している.7.果実の硬度,果実内成分含量,ペクチン含量,着色の変化などから綜合的に判定して,無袋果の成熟期は有袋果よりいく分促進されるようである.