著者
萩原 武士 石田 展一 竇 暁鳴 林内 賀洋
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 3 自然科学 (ISSN:03737411)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.p15-22, 1993-09

カリウム・コロイドを含むKI単結晶における電界発光現象の機構について知見を得るために,これまでにカリウム・コロイドの導入法の確立とその評価・同定法に関連する実験研究の成果の一部について報告を行ってきた。本研究では電界発光現象におけるカリウム・コロイド役割を明らかにする目的で付加着色法によって高濃度にF中心を導入できる条件下で,急冷法ではなく炉中冷却の方法を採用し,カリウム・コロイド,F中心およびF_2中心を含むKI単結晶を試料として実験を行った。その結果,約80Kの低温で電界発光のスペクトルを観測することにより,240nm,360nm,540nmに発光ピークが存在することが明らかになった。電界発光測定前後の試料についての光学吸収スペクトルを基礎としてカリウム・コロイドと関連する種々の色中心のエネルギー準位を考慮してこれらの三つの発光ピークについてモデルを検討した。240nmのピークについては,強電界下でカリウム・コロイド粒子から放出された電子が伝導帯に励起されて,自由電子となり試料中を動きまわりF中心と会合してF^-中心を形成する際の放射光であるとした。さらに,360nmと,540nmとの発光ピークは,それぞれカリウム・コロイド粒子から放出された正孔型中心であるV_k中心がF_2^+中心と会合する場合とV_k中心から変換されたH中心がF中心と会合する場合の放射光であるとした。