著者
長田 芳和 吉村 智子 森 誠一
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 3 自然科学 (ISSN:03737411)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.p29-36, 1988-08

岐阜県内の湧水が生じる溜池に生息するハリヨの産卵行動を観察したところ,14例の産卵が確認された。その時に見られたほとんどの行動要素は溯河性のイトヨにみられるものと同じであったが,いくらかのものは異っていた。つまり,本種の雄は,イトヨでよく知られた明瞭なジグザグダンスを行わないし,雄に追従してこない雌に対してもめったに攻撃しない。雌は雄の巣くぐり以前に巣に入ろうとしたり,ジグザグダンスが無いのに巣に突進することもあった。以上のようなことから産卵時の本種の雌はかなり性的衝動が高まった状態にあるように思われる。求愛行動は雌の行動によってほとんど一方的に中断させられるので,配偶行動の成功は雌の行動により大きく影響されると考察した。
著者
萩原 武士 石田 展一 竇 暁鳴 林内 賀洋
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 3 自然科学 (ISSN:03737411)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.p15-22, 1993-09

カリウム・コロイドを含むKI単結晶における電界発光現象の機構について知見を得るために,これまでにカリウム・コロイドの導入法の確立とその評価・同定法に関連する実験研究の成果の一部について報告を行ってきた。本研究では電界発光現象におけるカリウム・コロイド役割を明らかにする目的で付加着色法によって高濃度にF中心を導入できる条件下で,急冷法ではなく炉中冷却の方法を採用し,カリウム・コロイド,F中心およびF_2中心を含むKI単結晶を試料として実験を行った。その結果,約80Kの低温で電界発光のスペクトルを観測することにより,240nm,360nm,540nmに発光ピークが存在することが明らかになった。電界発光測定前後の試料についての光学吸収スペクトルを基礎としてカリウム・コロイドと関連する種々の色中心のエネルギー準位を考慮してこれらの三つの発光ピークについてモデルを検討した。240nmのピークについては,強電界下でカリウム・コロイド粒子から放出された電子が伝導帯に励起されて,自由電子となり試料中を動きまわりF中心と会合してF^-中心を形成する際の放射光であるとした。さらに,360nmと,540nmとの発光ピークは,それぞれカリウム・コロイド粒子から放出された正孔型中心であるV_k中心がF_2^+中心と会合する場合とV_k中心から変換されたH中心がF中心と会合する場合の放射光であるとした。
著者
山本 信弘 光藤 雅康 須藤 勝見 上延 富久治 近藤 雄二 山下 節義
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 3 自然科学 (ISSN:03737411)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.p287-297, 1988-12
被引用文献数
2

ファミリーコンピュータなどの家庭用テレビゲームが急速に普及し,児童の心身発達過程における悪影響が指摘されはじめた。われわれは,小学校高学年の児童を対象に質問紙法によりテレビゲームの実行状況を調査し,特に,画面を見つづけることによる視機能や身体・精神面への影響とテレビゲーム遊びがもたらす日常生活場面における影響に関するデータから,学校保健上の指導対策を考えた。その結果として以下の様な知見を得た。(1)テレビゲーム経験者は調査対象者の9割以上で,遊びの頻度と1回当りの時間については約4割の者が親や教師との約束を守りながら実行していた。(2)テレビゲーム実行後の自覚症行については眼の症状の訴えだけでなく,頸,肩,腕,手指などの訴えが多く,実行時の姿勢や環境に留意させる必要がある。(3)精神面については,「何もしたくない」,「イライラする」,「親の話を聞くのが面倒」などと訴える者が多く,無気力,短気,反抗的などの傾向がみられる。
著者
菅野 耕三 酒匂 俊彦
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. III, 自然科学 (ISSN:03737411)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.125-137, 1984-12-31

最近市原ら(1984)によって提唱された大阪府岸和田市津田川流域に分布する大阪層群における最下位の海成粘土層すなわちMa-1層層準およびその下位層から産する珪藻群集を検討した。その結果,Ma-1層から淡水棲種が多産し,海棲種がごくわずかに随伴するのみで,この粘土層の堆積環境は海水域とは考えにくい。しかし,その直下の粘土層から産する珪藻群集は,ほぼ100%淡水棲種から構成されており,両者の群集内容には差異があることから,堆積環境にも違いがあると思われる。また,このことは,珪藻化石を使ってこの層準の地層対比が可能なことを示唆している。Recently,Itihara et al.(1984)discovered a marine-like clay bed about 15m above Sengokubashi volcanic ash layer of the Osaka Group in the drainage area of the River Tsuda,Kishiwada City,and gave it the symbol,Ma-1.The writers carried out the analysis of the diatom flora in order to know the environment which the marine-like clay(Ma-1)were deposited.Their results are shown in Fig.6.
著者
松岡 弘
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. III, 自然科学 (ISSN:03737411)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.55-66, 1974

1歳~34歳までの死因の第1位を占めるのが不慮の災害(事故)による死亡である。それ故学校保健においても学校安全教育は重要な位置にあるが,その基礎的研究は以外に少ない。1),2),3)筆者はこれまで幼児,小学生,中学生,高校生,大学生および交通事犯少年らを対象にその安全能力の発達に関する一連3)-7)の研究を続けてきたが,今回は絵画面接技法による幼児の安全意識の発達に関する研究と,筆者らが開発をすすめている安全能力検査(SAT)を中学生,高校生および交通事犯少年に実施した結果を報告し,現在の学校安全教育の問題点について言及したい。本研究の要旨は次のようなものである。(1)交通安全を中心にした10枚の絵(27×10cm)を4~8歳児に提示し,その絵にしめされた状況にどう反応するかによって子どもの安全意識の発達をみた。その結果は,日常生活で必要とする安全知識の多くは8歳までに獲得されるが,幼児では交通安全教育の基本である正しい歩行・乗車のマナーなど基本的事項の学習が十分でないことが判明した。(2)安全能力検査(SAT)を中学生,高校生,交通事犯少年に実施した結果から次のような知見を得た。中学生から高校生の年代では,注意力・動作の速さなどの項目では得点の上昇がみられるが,動作の安定性・安全行動・リスクティク(挑危険)などの項目では変化がみられない。交通事犯少年は,動作の速さではすぐれているが動作の質で劣っている。すなわちスピードはあるが正確さに欠けることが推測され,かつ安全の態度でも問題のあるものが多い。Safety education is an important part of school health education, but little work has been done on the development of safety abilities of children. In order to measure adequately the development of the safety abilities of the pre-school child as well as the pupil, the author takes the following two approaches: a) To younger children (aged 4 to 8) are shown ten pictures and we ask for them to answer questions about the pictures. b) A Safety Abilities Test (SAT) is prepared for this study. SAT consists of attention test, speed test (A and B), emotion test and safety behavior test. The following results have been obtained: 1) Though most of the safety knowledges necessary for daily life is achieved at eight some other abilities are not sufficiently developed. 2) The scores on the attention test and speed test A (quantity test) are high for senior high school pupils, but as to the scores on the safety behavior test and speed test B (quality test) they are the same as junior high school pupils. 3) Boys who had been in traffic accidents or violated traffic rules had shown high scores on speed test A but low scores on speed test B.
著者
柴山 元彦 寺戸 真 中川 要之助
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 第III部門 : 自然科学 (ISSN:03737411)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.251-262, 1996-02-28 (Released:2009-02-20)

1995年1月17日に起きた兵庫県南部地震によって淡路島にあらわれた野島地震断層は,延長10km以上にもなる地震断層である。この断層を横断する12測線を設定し,放射能探査を行った。その結果断層部分で,高放射能値がいずれの測線でも認められた。また,簡易測定機器でも断層部分で高い値を示すことが分かった。筆者等はこれまで大阪平野下に存在する活断層の可能性を放射能探査法によって明らかにしてきたが,野島地震断層の放射能探査により活断層の発見がこの方法でより確かなものになった。 The Nojima Earthquake Fault, which has been formed by the earthquake of magnitude 7.2 occurred in the southern part of Hyogo prefecture, Japan, on January 17, 1995, extends more than 10km from Ezaki Lighthouse located at the northern end of Awaji Island to Toshima-cho. The fault runs parallel to the northern of the Nojima geological Fault. The former research (SHIBAYAMA・NAKAGAWA 1995 etc.) has been carried out to present the active faults found beneath Osaka Plain by Radioactivity Prospecting Method. This research was carried out to draw the distribution map of radioactive level by radioactivity prospecting method in the area of Nojima Fault. From the present study which 255 points of intensity of radioactivity could be checked, the following two could be shown; 1> there are some high radioactive level zones in this investigating area, 2> One of these zones are in agreement with the Nojima fault as new fault. From these it has become apparent that higher level zones show an active fault.