- 著者
-
石田 正臣
野口 達彦
篠田 清徳
細井 卓二
- 出版者
- 公益社団法人 日本化学会
- 雑誌
- 工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
- 巻号頁・発行日
- vol.66, no.3, pp.330-335, 1963-03-05 (Released:2011-09-02)
- 参考文献数
- 21
リン鉱石と硫酸との反応によって,過リン酸石灰を製造する時の反応条件と,初期反応生成物の硬化状態,化学成分等との関係を明らかにするために,リン鉱石(主としてフロリダリン鉱石)と硫酸とを混合反応させてから,各時間毎に生成物の針入度測定,流動期測定および化学分析を行ない考察を加えた。さらに過リン酸石灰の貯蔵中の固結の原因を解明するために,反応生成物のX線回折試験,熱天秤による加熱重量変化測定も行なった。結果は次の通りであった。(1)反応条件として,配酸比100,リン鉱粉粒度200メッシュ通過80%,硫酸温度50~60℃,硫酸濃度67~69%の時,反応速度が大で,生成物の状態も比較的良好であった。(2)遊離硫酸(F-H2SO4)の消費速度が大で,Ca(H2PO4)2・H2O,CaSO4,CaSO4・1/2H2O等の固体結晶成分が速やかに,かつ十分に生成するような条件下では,遊離リン酸(F-P2O5)や遊離水(F-H2O)も減少して,生成物は粘着性少なく状態が良好で,こういう製品ではまた貯蔵中の固結等の現象も起こりにくく,取り扱いが容易である。貯蔵中の固結は,主として,結晶水をとる固体結晶成分の析出,すなわち,生成物中に反応開始後長時間F-H2SO4が残存したり,生成物の温度の低下によって, 堆積山での多量のCa(H2PO4)2・H2O の生成析出, 硫酸カルシウム(CaSO4) の溶解およびCaSO4・2H2Oの析出等が起こり,その際の水和反応によって,製品を構成する粒子と粒子の間に,架橋を生じ,さらにF-H2O,F-P2O5,Fe化合物,Al化合物等の粘着性物質の共存が,その結合を強めることなどに原因すると考える。