著者
石田 絵美子
出版者
日本保健医療社会学会
雑誌
保健医療社会学論集 (ISSN:13430203)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.47-58, 2022-01-31 (Released:2023-01-31)
参考文献数
18

本研究では、長期入院患者を抱える精神科病棟で働く看護師の体験から、彼らの看護実践の構造を明らかにすることを目的とした。精神科病棟の看護師は、従来、長期入院患者への保護的・管理的処遇を非難されてきた。本稿で「そばにいる」「認める」「家族になる」「退院する患者を病棟で待つ」というテーマで記述した看護師たちのかかわりは、看護として明確に意識されない日常のかかわりや、あえて看護を意識しないことによって実施可能となる困難なかかわりでもあった。しかしそれらは、患者たちへの深い理解、看護者間の相互理解や他職種の協力、患者たちからの反応によって構成され、患者たちを回復へと導くという一面を有する重要な看護実践であると考えられた。
著者
石田 絵美子
出版者
日本保健医療社会学会
雑誌
保健医療社会学論集 (ISSN:13430203)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.30-40, 2014

本研究は、筋ジストロフィー病棟で過ごす青年期の患者たちとスタッフの「かかわり」に注目して、その「かかわり」の経験がいかに成り立っているのかを記述することを目的とした。参与観察法とインタビュー法によって得られたデータを用いて、メルロ=ポンティの現象学を手掛かりに、分析し、記述した。その結果、患者たちにとって、スタッフとのかかわりは、ただ単にケアを受けるという受動的なあり方とは異なり、患者自身が受けるケアを自分の問題として捉え、ゆえに自分で「やる」という強い意志を持つことによって実践されていた。そのようにスタッフと共に作り上げる患者たちの生活の中で、彼らは、機能低下していくばかりではなく、その中にあっても新しい自己を発見し、習慣として獲得することによって、自らの世界を拡張していくと考えられた。