著者
荒川 武士 石田 茂靖 佐藤 祐 森田 祐二 下川 龍平 煙山 翔子 岡村 唯 新野 直明
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11486, (Released:2018-11-30)
参考文献数
48
被引用文献数
1

【目的】本研究の目的は,脳血管障害者の嚥下障害の関連要因について,おもに運動要因に着目して検討することである。【方法】対象は回復期病棟入院中の脳血管障害者90 名(嚥下障害あり45 名,嚥下障害なし45 名)とした。調査項目は,基本属性の他に上下肢の運動麻痺の程度,歩行自立度,舌圧,舌骨上筋群の筋力,喉頭位置,頸部可動域,脊柱後弯度,体幹機能,呼吸機能,握力などの運動要因を評価した。単変量解析にて有意な差があったものを説明変数とし,嚥下障害の有無を目的変数とした二項ロジスティック回帰分析(尤度比検定:変数減少法)を実施した。【結果】脳血管障害者の嚥下障害に関連する運動要因は,舌骨上筋群の筋力,頸部伸展可動域,脊柱後弯度であることが明らかとなった。【結論】本報告は,理学療法士でも嚥下障害に介入できる可能性を示すものになると考えられ,臨床場面でも応用可能な有益な情報になるものと考えられた。
著者
荒川 武士 小林 秋太 佐藤 大地 石田 茂靖 市村 篤士 佐藤 正和 新野 直明
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.114-119, 2021-08-31 (Released:2021-12-31)
参考文献数
17

【目的】舌骨上筋群の筋活動向上方法の1つに頭部挙上訓練法(シャキア法)がある.頭頸部の挙上すなわち矢状面での屈曲運動には,運動学的に頭部屈曲,頸部屈曲,頭頸部屈曲の3 種類があるが,3 種のどれが有効であるか明確ではない.そこで,3 種の屈曲運動時の舌骨上筋群ならびに胸鎖乳突筋筋活動への効果を比較検討した.【方法】対象は65 歳以上の高齢者25 名とした.除外基準は,神経疾患の既往歴がある者,頸部・脊柱に著明な関節可動域制限や痛みを有する者,摂食嚥下機能に問題を有する者,口頭指示が理解できない者とした.課題は,頭部屈曲運動,頸部屈曲運動,頭頸部屈曲運動の3 種類とした.被検筋は舌骨上筋群に加え,頭部挙上時にも活動する胸鎖乳突筋の2 筋とし,表面筋電図を用いて筋活動を計測した.各課題2 回計測し,1 回ごとに30 秒間の休憩をとった.また,課題ごとに5 分間の休憩をとった.課題の順番はランダムに実施した.各課題の解析区間は挙上が安定してからの3 秒間とし,各筋群の原波形を整流後,3 秒間の平均振幅を求めた.2 回の平均値のうち値が大きいほうを代表値とした.頭部屈曲運動時の値を100%と規定して,頸部屈曲運動時と頭頸部屈曲運動時の筋活動の割合(%)を求めた.各課題時の筋活動をFriedman 検定にて検討した.有意水準は5% とした.【結果】舌骨上筋群は頭部屈曲100%,頸部屈曲68.8%[51.7%–97.8%],頭頸部屈曲64.4%[46.8%–95.6%](中央値[四分位範囲])であった.頭部屈曲は頸部屈曲,頭頸部屈曲よりも有意に筋活動が高かった.胸鎖乳突筋は頭部屈曲100%,頸部屈曲173.3%[105.9%–255.0%],頭頸部屈曲144.3%[118.0%–255.0%]であった(中央値[四分位範囲]).頭部屈曲は頸部屈曲,頭頸部屈曲よりも有意に筋活動が低かった.【考察】頭部屈曲運動が最も効果的な頭部挙上方法であった.今後は,介入研究にて嚥下機能におよぼす影響を検討する予定である.