著者
荒川 武士 小林 秋太 佐藤 大地 石田 茂靖 市村 篤士 佐藤 正和 新野 直明
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.114-119, 2021-08-31 (Released:2021-12-31)
参考文献数
17

【目的】舌骨上筋群の筋活動向上方法の1つに頭部挙上訓練法(シャキア法)がある.頭頸部の挙上すなわち矢状面での屈曲運動には,運動学的に頭部屈曲,頸部屈曲,頭頸部屈曲の3 種類があるが,3 種のどれが有効であるか明確ではない.そこで,3 種の屈曲運動時の舌骨上筋群ならびに胸鎖乳突筋筋活動への効果を比較検討した.【方法】対象は65 歳以上の高齢者25 名とした.除外基準は,神経疾患の既往歴がある者,頸部・脊柱に著明な関節可動域制限や痛みを有する者,摂食嚥下機能に問題を有する者,口頭指示が理解できない者とした.課題は,頭部屈曲運動,頸部屈曲運動,頭頸部屈曲運動の3 種類とした.被検筋は舌骨上筋群に加え,頭部挙上時にも活動する胸鎖乳突筋の2 筋とし,表面筋電図を用いて筋活動を計測した.各課題2 回計測し,1 回ごとに30 秒間の休憩をとった.また,課題ごとに5 分間の休憩をとった.課題の順番はランダムに実施した.各課題の解析区間は挙上が安定してからの3 秒間とし,各筋群の原波形を整流後,3 秒間の平均振幅を求めた.2 回の平均値のうち値が大きいほうを代表値とした.頭部屈曲運動時の値を100%と規定して,頸部屈曲運動時と頭頸部屈曲運動時の筋活動の割合(%)を求めた.各課題時の筋活動をFriedman 検定にて検討した.有意水準は5% とした.【結果】舌骨上筋群は頭部屈曲100%,頸部屈曲68.8%[51.7%–97.8%],頭頸部屈曲64.4%[46.8%–95.6%](中央値[四分位範囲])であった.頭部屈曲は頸部屈曲,頭頸部屈曲よりも有意に筋活動が高かった.胸鎖乳突筋は頭部屈曲100%,頸部屈曲173.3%[105.9%–255.0%],頭頸部屈曲144.3%[118.0%–255.0%]であった(中央値[四分位範囲]).頭部屈曲は頸部屈曲,頭頸部屈曲よりも有意に筋活動が低かった.【考察】頭部屈曲運動が最も効果的な頭部挙上方法であった.今後は,介入研究にて嚥下機能におよぼす影響を検討する予定である.
著者
佐藤 大地 庭野 賀津子
出版者
東北福祉大学教育・教職センター特別支援教育研究室
雑誌
東北福祉大学教育・教職センター特別支援教育研究年報 (ISSN:21850275)
巻号頁・発行日
no.13, pp.49-65, 2021-03-31

聴覚障害は新生児聴覚スクリーニング検査にて早期に発見され、早期からの適切な支援が行われることによって、有効な音声言語の発達を促すことが可能であると指摘されている。その早期支援の重要な役割を担っているのが、聴覚障害特別支援学校における乳幼児教育相談である。 本稿では、東北地方の聴覚障害特別支援学校14校の乳幼児教育相談を対象に実施した質問紙調査の結果より、乳幼児教育相談における支援活動と関係機関との連携に関する現状と今後の課題について検討することを目的とした。1955年代から制度的な裏付けがないまま継続されてきた聴覚障害特別支援学校における乳幼児教育相談は、担当教員による工夫や努力と関係機関との連携のうえで、教育相談が継続されてきているものの、今後検討されていくべき課題が多いことが明らかとなった。