著者
寺尾 詩子 萩原 文子 大槻 かおる 大島 奈緒美 清川 恵子 西山 昌秀 杉山 さおり 石田 輝樹 熊切 博美 相川 浩一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】当部では,就業継続の問題について検討を重ねているが,当事者となりうる休職者や退会者へのアプローチが難しい現実に直面している。今後就業継続を推進する上で,職場環境の整備の面にも着目し,「産休・育休取得時の人員確保が難しい」という会員の声を今後の活動に活かす目的で,産休・育休に伴う人員確保の実態を調査した。【方法】本会会員の所属する732施設の理学療法士の代表者を対象に,郵送法でアンケート調査をした。調査期間は2015年7月の1か月間とした。【結果】339施設(回収率46.3%)から回答があり,回答者の性別は男性58.4%,女性42.6%,年齢は40歳代が38.6%,30歳代37.2%,50歳代16.5%,20歳代0.6%であった。産休・育休の過去3年の取得実績は43.3%の施設であり,施設分類では「病院」で63.9%,「介護老人保健施設」45.2%,「クリニック」「通所施設を含む福祉施設」「訪問看護ステーション」では20%台であった。施設の所属理学療法士数別に取得実績のある施設は,「6人以上」は67.3%,「5人」50.0%,「3,4人」25.3%,「1,2人」17.1%であった。短時間勤務などの復職後の制度利用実績のある施設は全体の34.8%で,「福祉施設」「訪問看護ステーション」以外は産休・育休取得より利用実績は少なかった。出産・育児と仕事を両立していくための問題として挙げた内容は,「人員確保」が232施設(68.4%)と最も多かった。現在の欠員状況については,「あり」との回答が全体の31.8%で,欠員理由は「もともと定員に満たない」が55.6%,「産休・育休取得中の欠員」が42.6%であった。人員確保の手段は「業務分担を増やす」217施設,「増員を働きかける」132施設,「求人活動」117施設,「業務調整を行う」94施設,「業務縮小」84施設であった。求人活動は「人材バンクの利用」45施設,「独自のシステムの利用」10施設であった。求人広報手段は「本会ホームページ利用」は62施設で,求人はしないとの回答もあった。【結論】育児と仕事の両立していくための問題として最も多く挙がったのは「人員確保」であった。また,欠員ありと回答した施設の欠員理由は,半数が産休・育休取得によるものであった。人員不足は十分な制度整備のない中,全ての立場で負担となり対応に苦慮している現状がある。求人を出して対応する場合も,求人欄への掲載費負担や求人への反応の乏しさ,上層部の理解のなさから求人活動はしていない施設があることも分かった。本会の求人欄の利用を確認すると利用施設は全体の18%に止まっており,本会として求人欄の見直しは課題と考える。更に,復職支援事業の利用拡大,本会地域組織体制(ブロック化)の見直しやその利用といった現在の活動を生かした活動から問題解決につながるように検討していきたい。