著者
岡山 博人 佐方 功幸 石見 幸男 白髭 克彦 大矢 禎一 石見 幸夫
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2001

当研究の主たる課題であり、発癌の根底機構をなす足場依存性・非依存性細胞周期機構の解明に向けて研究を推進し、重要な進展を得た。特に、足場消失に伴い、染色体DNAの複製開始に必須なCdc6タンパクの発現が転写停止とタンパクの分解促進によって遮断されること、このタンパク分解に、少なくとも2種類のユビキチンリガーゼと1種類のカテプシン様システインプロテアーゼが関わっていること、その一つはG1期で作用することが示されているCdh1-APであり、その働きに癌抑制因子p53が必要であること、更にこれらの系によるCdc6タンパクの分解制御にTsc-Rhebシグナル伝達経路が深く関わっていることを見出した。一方、G1期サイクリン依存性キナーゼのなかでCdk6/サイクリンD3の複合体が、阻害タンパクの影響を受けないこと、その結果、増殖刺激が無い状態で細胞の増殖促進効果を発揮し化学発癌に対する細胞の感受性を著しく引き上げること、更に、骨細胞分化を負に抑制することを明らかにした。他方、細胞周期チェックポイント制御に関して、以下の知見を得た。Myt1キナーゼはCdc2の抑制的キナーゼであり、ツメガエル卵の減数分裂においては、Mos/MAPK下流のp90rskキナーゼがMyt1と結合し、その活性を阻害している。また、体細胞周期においてPolo様キナーゼPlx1がMyt1と結合しリン酸化することによってその活性を阻害することを見出した。更に、様々な基質中の二重にリン酸化されたDSGモチーフ(DpSGFXpS)を認識するSCFb-TrCPユビキチンリガーゼが、ツメガエルおよびヒトのCdc25Aにある新規な非リン酸化型DDGモチーフ(DDGFXD)を認識し、分解に導くことを見出した。