著者
石間 英雄
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.47-57, 2018 (Released:2021-07-16)
参考文献数
39

なぜ,政党は議会提出前に法案の実質的な審議をするのだろうか。本論文では,日本とオーストラリアの主要政党を題材に,議会政党による法案の事前審査を,対称的な二院制のもとでの調整メカニズムとして捉え,その説明を試みる。具体的には,対等な二院制による制約のため,議会内でなく政党内政策組織で議員間の調整が行われると主張する。対等な二院制である両国の政党の活動を調査したところ,議会提出前に政党が法案を審査しており,党内の政策委員長に上院議員も就任していた。加えて,日本の自民党の部会活動を分析したところ,野党議員が参議院の委員長職に就いた場合,委員会と対応する部会の活動が増加することが明らかとなった。以上の結果からは,上院の存在が政党組織に影響を与えており,旧来の下院中心的な政党観を脱する必要が示唆される。
著者
石間 英雄
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.1_134-1_158, 2017 (Released:2020-07-01)
参考文献数
52

本論文は, オーストラリア労働党の事例を調査することによって, 政党の一体性に関する理論に対する貢献を行なうことを目的とする。オーストラリア労働党は, 凝集性が低く, かつ規律の執行が難しいにも関わらず, 極めて一体性が高く, 既存の理論によっては説明することが難しい事例である。本論文は, 政党内部組織に注目し, 党内における調整メカニズムがオーストラリア労働党の一体性を導くメカニズムであると主張する。 オーストラリア労働党の内部にはコーカスと呼ばれる組織が存在し, 下位組織としてコーカス政策委員会が存在している。コーカスは, 政策決定過程に埋め込まれており, 事前調整のメカニズムとして機能していた。意思決定過程を観察したところ, コーカス内の議論において, 一般議員が大臣提出法案に対し影響力を発揮していたことが明らかとなった。この党内の調整メカニズムによって, 議会提出前に, 執行部と一般議員の間で合意が成立していたため, 議会内での一体性が観察されたと考えられる。