著者
石黒 一次
出版者
北海道教育大学教育学部旭川校特殊教育特別専攻科障害児教育研究室
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
no.18, pp.13-20, 1999

平成6年4月,11年ぶりに一般学級の担任となり,5年生38名との期待あふれる出会いがスタートした。数日間がたち,子供たちに二つの気掛かりなことを感じた。一つは,教室中に交錯している「金切り声・怒鳴り声」である。一人の女児に「疲れない?」と尋ねたら,「はい!でも,こうしなければ話が通らないの!」という返事であった。あわせて授業に先立って「注視・傾聴」の声掛けが,児童個々に必要であった。もう一つは,身体すれすれに乗用車が近付いても,クラクションの合図があるまで「身の危険を回避する」「運転者に進路を譲る」などの行動に気が向かないことであった。これらの子供たちの変化は,授業不成立,学級崩壊などの事象に無関係ではないように思える。私は,教育の基盤8割が感情交流の醸成であると実感している。本論は,これまで様々な子供たちとの出会いを振り返り,教育と感情の相互機能について一考する。
著者
石黒 一次
出版者
北海道教育大学
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.113-120, 1996-03-15

夏休みを間近に控え,校下の公園で過ごす一人の青年のことが,大きな話題となった。その青年は子供たちの遊びの中に分け入り,夕方暗くなるまで公園で過ごすことを毎日の楽しみとしているようであった。そうした青年の思いとは裏腹に,子供たちは大人と遊ぶことへの「遠慮や違和感」など,遊びの不自由さを次第に募らせていった。夕方になり子供たちが帰宅し始めると,青年は帰りそびれた子どもをいつまでもその場に留めた。その上,帰ろうとする仕草に逆上し,長々と怒鳴りつけることが度々あった。当然,子供たちの間では,「怖い人」「おかしい人」などのマイナスイメージが膨らみ公園で遊ぼうとする子供たちはその青年の姿をうかがい,避けるようになっていった。本論は,一青年のなげかけを通し,児童・父母・教職員が共通の基盤に立ち,これまでの人間関係やふれあいの在り方を振り返るなど,多くを学んだ実践事例を報告する。