著者
神保 有紀 福田 忠彦
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.281-288, 1997-10-15 (Released:2010-03-12)
参考文献数
16

近年, 日本の多くの駅で発車予告の合図に音楽を用いている (以下「ベル音楽」と称す). 本研究は, ベル音楽とそれのもたらす心理的効果との関係について分析し, 併せてその利用環境についての考察を行い, 発車予告にふさわしいベル音楽のあり方を提案することを目的とした. 発車認知に関するアンケート調査の結果から, 駅利用者が急いでいるときほど聴覚的情報を手がかりとし, なかでもベル音楽を望む人が多数を占めることがわかった. そして, フレーズパターンの試聴実験により, そのベル音楽は, 人の歩く速さよりやや速めのテンポ, 上行形のメロディーライン, ドミナントを経由しトニックで終わる和声進行などの音楽的構造を備えていることが好ましいこと, さらにリズムの刻み方によりふさわしいテンポが異なること, 年齢によりテンポの感じ方が異なることなどが明らかになった.