著者
神崎 美玲
出版者
山梨大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、悪性黒色腫治療モデルにおけるTGF-β阻害分子の抗腫瘍効果および、腫瘍ワクチン療法と併用した場合の抗腫瘍効果を検討し、最終的には悪性黒色腫の新しい治療法を確立することを目的とする。先に申請した研究計画に基づき、昨年度は以下の2点について研究を行った。1. Melanoma(B16)担癌マウスにおけるTGF-β阻害薬による抗腫瘍作用の検討担癌マウスの治療的モデルを用いて悪性黒色腫に対するTGF-β阻害薬の抗腫瘍効果を検討した。C57BL/6マウスの腹部にB16 melanomaを皮内接種して作成した担癌マウスモデルに、TGF-βRI kinase inhibitor(HTS 466284)を腹腔内投与し、腫瘍径を観察した。腫瘍長径(a)、短径(b)を測定し、腫瘍塊の大きさをtumor index(ab)で評価した。TGF-βRI kinase inhibitorを投与した群において、tumor indexはコントロール群のそれと有意差なく、TGF-βRI kinase inhibitor単独投与では抗腫瘍効果が期待できないことが示された。2. 腫瘍ワクチン療法と併用した場合の抗腫瘍作用の検討先述のTGF-β阻害薬を当教室で以前から行っている腫瘍ワクチン療法と併用し、腫瘍径やsurvivalの評価を行った。担癌マウスモデルにTGF-β阻害薬とR9-OVA融合タンパクを用いた腫瘍ワクチン療法を併用し、腫瘍径やsurvivalの評価を行った。TGF-β阻害薬併用しても、腫瘍径・survivalともにワクチン療法の効果を増強させることはなく、残念ながら抗腫瘍効果は認められなかった。今後は、TGF-β阻害薬を腫瘍塊に直接投与して抗腫瘍効果を検討するなどの工夫が必要と思われた。