著者
神戸 博太郎
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子 (ISSN:04541138)
巻号頁・発行日
vol.17, no.7, pp.650-655, 1968-07-01 (Released:2011-09-21)
参考文献数
16
被引用文献数
2 2

高分子の熱的性質は高分子の加工に際し,重要な役割をもつと同時に,その熱力学的状態を決定する重要な指標である。熱力学的量である高分子の比容積およびエンタルピー,そしてこれらの温度依存性の係数である熱膨張率と比熱は,高分子の転移を決定するために用いられる。結晶性高分子における融解,無定形高分子におけるガラス転移は,熱力学的には一次および二次の転移とみなされる。またこれらの転移の起こる温度は,高分子を同定する有力な目安となる。これらの転移温度と高分子の構造との関係については多くの研究がなされているが,一般的にいえば,分子鎖の内部回転に対する障害が少なく,屈曲性の大きい高分子ほど,転移温度が低い。逆に剛直な分子構造をもつ高分子は転移温度が高く,軟化しにくい。高分子鎖に芳香環を導入することにより,その耐熱性が向上できる。