著者
田宮 徹 藤見 峰彦 神澤 信行
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

ヘビ毒および哺乳類の膵液に含まれるいわゆる外分泌性ホスホリパーゼA2(PLA2)は、その一次構造が明らかになったものが多くある。両酵素間には一次構造におけるホモロジーがあるほか、X線結晶構造解析により明らかになった立体構造においても類似性がある。外分泌性PLA2は7個のジスルフィド結合の位置の違いにより2群(I型、II型)に分類される。I型PLA2はコブラ科、ウミヘビ科に属するヘビの毒や膵液に含まれるもので、Cys11とCys77間のジスルフィド結合が存在するのがその特徴である。さらにI型は、哺乳類膵臓由来のPLA2に存在する"pancreatic loop"の有る(IB)、無い(IA)により2つのサブグループに分類される。II型はマムシ科、クサリヘビ科に属するヘビの毒や炎症部由来の非膵臓型PLA2がこれに含まれる。一般に、ヘビ毒中のPLA2は神経・筋接合部の神経側に作用してアセチルコリンの放出を阻害することで毒性を発現する。コブラ科のヘビ毒中に存在するI型PLA2は、PLA2活性の強いもの、弱いもの、毒性の全くないもの、強いものまでいろいろで、なかにはtipoxinγやOphiophagus hannnahの毒由来PLA2のように、"pancreatic loop"を持つものも知られている。沖縄産エラブウミヘビの毒液中にはI型PLA2が存在することが既に明らかになっている。本研究では、エラブウミヘビ毒腺並びに膵臓で発現しているIA及びIB型PLA2遺伝子(cDNA、genome DNA)の構造を明らかにした膵臓由来I型(IB)PLA2と毒腺由来I型(IA)PLA2の遺伝子を比較したところ、イントロンは互いに良く保存されていたが、膵臓由来I型に存在する"pancreatic loop"および第4エクソンの後半部分が毒腺由来I型では欠損していた。毒腺が唾液腺から変化した器官であることを考慮すると、毒腺由来I型PLA2は膵臓由来I型のprototypeを祖先遺伝子として進化してきたと考えられる
著者
浅野 尚人 戸城 達也 神澤 信行
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集 第52回日本植物生理学会年会要旨集
巻号頁・発行日
pp.0902, 2011 (Released:2011-12-02)

オジギソウは熱や接触に応答し、屈曲運動を行う。この運動には水の移動が関与しており、主葉枕下部から急激に水が放出され膨圧が低下することで屈曲運動が起こると考えられている。このような素早い水の移動にはアクアポリンの関与が考えられた。当研究室では計7種のPIPアイソフォームが単離されており、それぞれの水透過性が測定されている。運動細胞で発現、機能しているPIP遺伝子を特定するために実生オジギソウの各部位からcDNAプールを作製し、real-time PCR及び半定量的PCRによって発現量の解析を行った。その結果、主葉枕にはPIP2;2、PIP2;3遺伝子が発現していることが示唆された。さらに、主葉枕を下部と上部に分割して解析した結果、PIP2;2遺伝子が下部に多く発現していた。屈曲運動は接触して数秒で反応することから、PIPのリン酸化及び脱リン酸化による活性制御が考えられ、本研究ではこれらの阻害剤を用いて機能解析を行った。結果、PIP2;2は脱リン酸化阻害剤により水透過性が向上した。リン酸化される個所として、他の植物同様PIP2;2 にはC末端にPKCリン酸化モチーフが保存されている。そのため、PKCによる活性への影響を観察するために変異体を作製した。その結果PIP2;2の3つのリン酸化モチーフは全てPKCのリン酸化による活性調節を受けていることが示唆された。