著者
神田 光啓
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.7-15, 1994-09-30 (Released:2017-06-01)
参考文献数
67

80年代に教育・学校問題から自殺・殺人を含む深刻な社会問題となった今日の学校におけるいじめの問題について,どのような研究が進められてきたのかを教育研究情報検索によって得られた学会誌,大学紀要掲載論文等63編を検討してみた.心理学,社会学,体育学,精神医学,教育学研究論文である.85年に森田が提起した,いじめの定義,いじめの4層構造,いじめの4形態などが80年代後半の各分野でのいじめ研究に影響を与えたきたのが分かった.しかし,いじめの実態把握,いじめの性格を解明するには森田の提起は役割は果たしているが,いじめの実践的解決,いじめが生み出す病理の実際的解決への論理においては,必ずしも十分ではない.臨床心理学の立場からの高石の「少年期それ自身の独自の人格修復機能」等に注目しつつ,教育学,精神医学,臨床心理学等の学問の実践性が問われる諸分野でいじめを実践的に解決していく鍵概念の提起が待たれているといえよう.