著者
石綿 良三 田辺 基子 神谷 克政 根本 光正
出版者
神奈川工科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

多くの科学入門書、テレビ番組、インターネット情報などで流体力学現象の原理の誤認識が多く見られる。誤認識の拡散実態と拡散メカニズムを調査研究し、拡散防止策の提言を進めた。特に、拡散メカニズムには科学的要因だけではなく、著者や読者の理解とその心理、社会的背景等まで踏み込む必要があり、その追及を行った。(新型コロナウィルス感染拡大の影響を受け、研究の進行に制約を受けた。2020年度は当初の研究最終年度あったが、期間を1年間延長し2021年度に継続することになった。)小学校5年理科の教科書・参考書で「曲がる川では外側が速い」と記述されていることについて調査を進めた。厚木市近隣の実際の川における計測では、外側が速いか、遅いかは一概にはいえないことを確認した。しかし、内側に堆積している川では外側で速くなることが多く、教科書の記述に合うともいえる。だが、曲がることに外側を速くする効果があると認識させてしまうことは問題であり、大学で習う流体力学とは矛盾することになる。実際の川における計測はまだ不十分であるので、調査範囲を拡大するとともに文献調査を進める予定である。小学校5年理科の「曲がる川」に関するビデオ教材の調査を行った。それらの教材では、外側で速く、内側で遅く流れている川の映像、実験映像ばかりである。これは教育内容に則したものであり、当然の状況であるが、実際には一概に外側が速いわけではないので、一部の偏った情報のみが選択的に公開され、教育に利用されている可能性がある。この点についてさらなる調査を2021年度に行う予定である。なお、これまで行ってきた、理科教員、科学館スタッフ、科学ボランティア、大学・高専教員を対象にした研修会を実施することができなかった。流体力学に関する原理の理解状況、誤認識の実態調査を直接行えなかったので、この点については2021年度に継続することとした。