- 著者
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神谷 英二
- 出版者
- 福岡県立大学人間社会学部
- 雑誌
- 福岡県立大学人間社会学部紀要 (ISSN:13490230)
- 巻号頁・発行日
- vol.30, no.1, pp.113-125, 2021-10-01
1920-30年代の日本における都市モダニズムの文学者が、ベンヤミンの言う「遊歩者」であり得るという仮説が本研究の出発点である。この時期、モダニズムの芸術運動は世界同時的に進むとともに、芸術間の交流が著しくなり、特に文学と映画、文学と絵画、文学と音楽の交通と越境に興味深い現象が発生している。また、都市モダニズムは芸術に限らず、都市文化全般に広がり、その起点に、詩雑誌・文芸雑誌があったことが重要である。ベンヤミンによれば、街路名により都市は言葉の宇宙となり、解読可能なテクストとして、遊歩者である芸術家・詩人に示される。だが、日本の都市では、それは19世紀パリのような解読を待つ織物としてのテクストではなく、スクリーンとしての頭脳に映る猛スピードで飛び去る形象であり、断片化による描写が不可欠と言える。研究の第1部である本稿では、都市モダニズム文化を詩に昇華させる方法として、映画的芸術としてのシネ・ポエムに焦点を当て、竹中郁の「ラグビイ」を代表作とする『詩と詩論』同人や関係の深い詩人のシネ・ポエム作品と詩論を扱う。