著者
岡本 雅享
出版者
福岡県立大学
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 = Journal of the Faculty of Integrated Human Studies and Social Sciences, Fukuoka Prefectural University (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.11-31, 2009-01-08

筆者は拙稿「日本における民族の創造」(大阪経済法科大学『アジア太平洋レビュー』第5号、2008年9月)で、1880年代末の日本で「民族」という言葉・概念が生じてから、どのよう に民族が創造されてきたかを、大和民族(1888年初出)と出雲民族(1896年初出)を対比しながら検証した。本稿では民族の三要素(歴史・文化、言語、宗教)の中で、日本の中ではより単一だと思われがちな言語に焦点をあてて、単一・同質だといわれるものの内部から、その幻想を解体してみたいと思う。
著者
岡本 雅享
出版者
福岡県立大学
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.11-31, 2009-01-08

筆者は拙稿「日本における民族の創造」(大阪経済法科大学『アジア太平洋レビュー』第5号、2008年9月)で、1880年代末の日本で「民族」という言葉・概念が生じてから、どのよう に民族が創造されてきたかを、大和民族(1888年初出)と出雲民族(1896年初出)を対比しながら検証した。本稿では民族の三要素(歴史・文化、言語、宗教)の中で、日本の中ではより単一だと思われがちな言語に焦点をあてて、単一・同質だといわれるものの内部から、その幻想を解体してみたいと思う。
著者
郝 暁卿
出版者
福岡県立大学
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 = Journal of the Faculty of Integrated Human Studies and Social Sciences, Fukuoka Prefectural University (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.13-27, 2008-07-31

中国医療システムには中医学、現代医学、中西医結合医学という三つの流れと医療が存在する。本稿は「中医学、ウイグル医学、日本の代替医療の医療人類学的比較研究―リサーチプランのための基礎研究―」のプロジェクトの一部として、中西医結合医学を中心に、その歴史と成果および問題点を述べたものである。結論として、中西医結合医学の実践は現代医学の衝撃を受けながら中医学の存続が激しく議論され、中医学の医学関係者と擁護者たちが絶え間ない努力をした歴史過程の中で、また、中華人民共和国が成立した後、中国政府が盛んに提唱したのを背景に行われたものである。このような試みは中国の国内で賛否両論があるが、認められた治療思想や治療法などが数多くあるため、今後も中医学と現代医学のすぐれたところをとりながら、開拓し続けていくだろうと見られる。しかし、この新しい医学としての価値と展望については将来における更なる実践の中で証明し、開かなければならないと思われる。
著者
中村 晋介
出版者
福岡県立大学
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 = Journal of the Faculty of Integrated Human Studies and Social Sciences, Fukuoka Prefectural University (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.19-31, 2011-01-08

現在の日本では、「スピリチュアルなものへのあこがれ」、いわゆるスピリチュアル・ブームが、若い世代の間にも広がっている。ここ1~2年の間に、社会学や心理学の領域で、この要因を考察した論考が多数出版された。 本稿で、著者はこれらの論考を6つのパターンに分類し、それらを仮説としてその妥当性を検討する量的調査(福岡県内の4大学を対象、有効票509)を実施した。具体的には、①自己責任が強調される風潮のに耐えられない個人化した自己が求める「癒し」への希求、②スピリチュアルな言説と既成宗教の言説との連続性への忘却、③土井隆義が言う「キャラ化」した自己の動機付に関連した議論、④「大きな物語」への依存と忌避を並列させようとの思い、⑤望ましい心理的影響のみを求めるプラグマティックな心理主義、⑥TVメディアの培養効果、の妥当性を計量した。 量的分析の結果、これらの仮説のほぼ全てが棄却された。分析を進めると、スピリチュアルなものへの関心が、女性のジェンダー・トラッキングに関係している可能性がむしろ示唆された。今後、ジェンダーの視点でスピリチュアル・ブームを研究することは、宗教社会学のみならず、ジェンダーに関する社会学的研究をも前進させる可能性がある。
著者
岡本 雅享
出版者
福岡県立大学
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.73-99, 2012-01-08

筆者は拙稿「アテルイ復権運動の軌跡とエミシ意識の覚醒」(『アジア太平洋レビュー』 第8号)で、1980年代後半から2000年代にかけて東北で生じたアテルイ復権運動を検証したが、 本稿では、ほぼ同じ時期(1990年代前半)、南九州(熊本県球磨郡免田町)で起きたクマソ復権運動の軌跡を辿り、それが意味したものを検証し、南九州人のアイデンティティについて考察する。
著者
森 礼子
出版者
福岡県立大学
雑誌
福岡県立大学看護学部紀要 (ISSN:13488104)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.56-66, 2005-03

TESOL(英語教育学)ではrecastと呼ばれる間違いの直し方がある.本稿ではESL(英語を母語としない学習者に英語圏で教える)教師が,どのような信念を持ち,どのような目的を達成するためにrecastを用いたかを調査した.ここで調査した教師は学習者が間違ってもいいから発言ができるような教室の風土作り,話したいという思いにかられて話し合いに参加するような学習活動の立案と実行,興味を持って学習者の話を聞く,などの目的を持って教えていて,recastはそのようなさまざまな目的を達成しつつ,話し合いを前に進め,言語的に正しい表現を提示するのに適した間違いの直し方であった.この調査は,recast研究では教師自身がどのような信念を持って間違いを直しているかを調査することの必要性を示唆している.
著者
安酸 史子 中野 榮子 永嶋 由理子 松枝 美智子 渡邉 智子 檪 直美 安永 薫梨 清水 夏子 浅井 初 坂田 志保路 吉田 恭子 江上 史子 小森 直美 小野 美穂
出版者
福岡県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

経験型実習教育の研修プログラムを教員、実習指導者、学生を対象に実施した。研修毎にアンケート調査を実施し、研究者間で検討を繰り返し研修プログラムのバージョンアップを図った。学生は実習に臨む直前、強い不安を抱いていることが明らかになった為、実習前の演習にプロジェクト学習を取り入れた結果、不安の程度の軽減を図ることができた。また教材 DVD を制作し、活用した。いずれの研修も満足度が高く、この研修プログラムが有効であることが示唆された。さらに経験型実習教育を受けた学部生及び卒業生にグループインタビューを実施し、経験型実習の効果が確認できた。今回の取り組みや成果は、学会発表および経験型実習教育ホームページで公表した。
著者
小松 啓子 岡村 真理子
出版者
福岡県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究は、保育所が果たすべき社会的役割が変化するなか、今後保育所(園)は家庭の役割を受け継ぎ、深め、発展させていく必要が求められているという前提にたち、伝統的な食文化を取り入れた保育所(園)給食のあり方について検討した。福岡県の京築地区、筑豊地区、福岡地区、筑後地区で開所している522園の保育者を対象にアンケート調査を実施した。調査内容としては、保育活動のなかで取り組んでいる歳時記行事と園児の関わり、給食のなかに取り入れられている行事食の内容、給食のなかに取り入れられている伝統的な郷土食の内容と園児の関わり、保育活動のなかで菜園活動と園児の関わり、地域のお祭りと保育活動とした。同時に、京築地区および筑豊地区の保育所(園)に通っている6563名のを対象に、伝統的な食文化を子ども達に伝承していくための基礎資料を得るために、基本的生活習慣および食生活習慣の実態調査も実施した。我が国においては、伝統的な食文化は家庭において「おふくろの味」を通して子ども達に伝承されてきたが、これからは、そのような機能を家庭だけにとどまらずに、保育所(園)に持たせることが重要と考えられる。伝統的な郷土食を給食に取り入れることにより、これまで軽視されがちだった地城性や季節感を子ども達が体得できるようになることが期待できる。今回の調査から、保育活動のなかに給食を位置づかせ、子ども達が季節感豊かな伝統的な郷土食に関わる環境作りが、健全な心と身体を培うことに直接的につながっていくことが示唆された。なお、地城の伝統的な食文化は、人が生きてきた長い歴史のなかで、地域の食材活用、季節、行事などを背景に、人と人との関わりを通して心豊かな人間の形成に大きく寄与してきたことを考えると、伝統的な食文化を重視した保育活動は子ども達の「心の教育」に必須と言えよう。
著者
石橋 朝紀子 内田 雅代 岡村 純 内田 雅代 岡村 純
出版者
福岡県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

小児がんを経験した思春期にある長期生存者の弾力性(ストレスをはね返す力)について、面接調査を行った。結果は、自ら病名を親友へ告知していた者は、人の為になることなど明確な目的を持ち、交友関係も良い傾向にあった。告知していない者は、身体的な回復を希望していたが、交友関係は良好ではない傾向にあった。前者が将来への目的を実行できるための看護支援を立案中である。後者については、弾力性を高める看護支援に繋げていくためにも継続調査が必要である。
著者
麦島 剛
出版者
福岡県立大学
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 = Journal of the Faculty of Integrated Human Studies and Social Sciences, Fukuoka Prefectural University (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.51-63, 2006-03-17

注意欠陥多動性障害(ADHD)は、不注意、多動性、衝動性を主症状とし、生物学的要因が土台となって発現すると考えられる発達障害である。この障害はてんかんの約20%に併発され、この場合、発作の制御によりADHD 症状が改善し、患者自身の自尊感情が上昇する。このようにADHD 症状には心理・社会的要因との相関があり、行動療法など、ADHD 児やその親に対する心理・社会的アプローチが有用である。いっぽうで中枢刺激薬などによる薬物療法が有効である。現在、前頭前野や大脳基底核のdopamine機能異常を中心として、ADHD の神経基盤が議論されている。また、最近、noradrenaline再取込み作用の阻害がADHD 症状を緩和することが示され、この作用をもつ薬剤による治療が米国で開始された。Noradrenalineは注意機能に深く関与しており、今後の研究の展開が望まれる。神経基盤の研究においては動物モデルの開発が重要であり、現在、SHR をはじめとするモデルが示されている。新しいモデルとしててんかんモデル動物であるEL マウスが有用かもしれず、新たな可能性が期待される。さらに、従来のADHD 動物モデル研究ではおもにその多動性が着目されていたが、不注意や衝動性という認知機能をも十分に議論する必要がある。その試みとして、筆者はオペラント学習理論に基づいた行動指標を開発中である。これにより、さらに本質的なADHD の神経基盤の解明が進み、新薬開発に有用となる可能性がある。さらには、動物モデルにおいて(弁別刺激)反応強化随伴性とADHD 症状との関係が議論できることになり、より効果的な行動療法の開発へとつながると考えられる。
著者
中村 晋介
出版者
福岡県立大学
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.37-50, 2010-07

One of the serious social problems is the increasing of number of public assistance recipients. This article would like to suggest that those recipients capable of gaining "independence by working" should be identified and a system established to assist them in achieving this goal. For the purposes of this study, a database containing 502 public assistance recipients in Tagawa, Fukuoka Prefecture was examined. Through a statistical analysis of this database, the following recommendations towards independence from public assistance may be made:1) In the initial stages of public assistance, administrators and caseworkers should offer incentives to work to recipients.2) For the sake of recipients who are single mothers, the number of day-nursery facilities should be increased in order to assist them in job-hunting and/or the procurement of work-related qualification or skills.3) For recipients suffering from some form of addiction (e.g. drugs, gambling, alcohol), the treatment of their addiction should be prioritized
著者
中村 晋介
出版者
福岡県立大学
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 = Journal of the Faculty of Integrated Human Studies and Social Sciences, Fukuoka Prefectural University (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.37-50, 2010-07-31

One of the serious social problems is the increasing of number of public assistance recipients. This article would like to suggest that those recipients capable of gaining “independence by working” should be identified and a system established to assist them in achieving this goal. For the purposes of this study, a database containing 502 public assistance recipients in Tagawa, Fukuoka Prefecture was examined. Through a statistical analysis of this database, the following recommendations towards independence from public assistance may be made:1) In the initial stages of public assistance, administrators and caseworkers should offer incentives to work to recipients.2) For the sake of recipients who are single mothers, the number of day-nursery facilities should be increased in order to assist them in job-hunting and/or the procurement of work-related qualification or skills.3) For recipients suffering from some form of addiction (e.g. drugs, gambling, alcohol), the treatment of their addiction should be prioritized
著者
中村 晋介
出版者
福岡県立大学
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.19-31, 2011-01

現在の日本では、「スピリチュアルなものへのあこがれ」、いわゆるスピリチュアル・ブームが、若い世代の間にも広がっている。ここ1~2年の間に、社会学や心理学の領域で、この要因を考察した論考が多数出版された。 本稿で、著者はこれらの論考を6つのパターンに分類し、それらを仮説としてその妥当性を検討する量的調査(福岡県内の4大学を対象、有効票509)を実施した。具体的には、①自己責任が強調される風潮のに耐えられない個人化した自己が求める「癒し」への希求、②スピリチュアルな言説と既成宗教の言説との連続性への忘却、③土井隆義が言う「キャラ化」した自己の動機付に関連した議論、④「大きな物語」への依存と忌避を並列させようとの思い、⑤望ましい心理的影響のみを求めるプラグマティックな心理主義、⑥TVメディアの培養効果、の妥当性を計量した。 量的分析の結果、これらの仮説のほぼ全てが棄却された。分析を進めると、スピリチュアルなものへの関心が、女性のジェンダー・トラッキングに関係している可能性がむしろ示唆された。今後、ジェンダーの視点でスピリチュアル・ブームを研究することは、宗教社会学のみならず、ジェンダーに関する社会学的研究をも前進させる可能性がある。
著者
藤山 正二郎
出版者
福岡県立大学
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.1-13, 2012-01-08

先に私は「野生の思考としての伝統医学」という論文を書いた。その要旨は、漢方などの伝統医学は近代医学とは異なる科学的認識で成立している、いわばレヴィ=ストロースの言葉の「具体の科学」として伝統医学を展開することであった。さらに本論ではレヴィ=ストロースの『野生の思考』の「感性的表現による感覚界の思弁的な組織化と活用をもとにしてなしえた自然についての発見」を基本として、第1章の「具体の科学」のなかの「ブリコラージュ」 「神話的思索」の概念を消化して、漢方、中医学、ウイグル医学という私が多少とも関わった伝統医学の理解に応用したいと考えている。 「具体の科学」とは遅れている科学ではない。近代医学は部分的に伝統的な処方薬などの分析を行い、伝統医学の効能を認めつつある。分析とは近代の科学的方法の一つである。それによって、この二つの科学のコミュニケーションが部分的には可能であろう。しかし、その背後にある身体観、自然観などを理解可能なものにしないと、伝統医学は科学ではなく、哲学、思想にとどまってしまう。そうしないためにも、この二つの科学的認識を対照させながら、相互にその認識の特徴を明らかにしたい。 ブリコラージュとは、 「ありあわせの道具材料を用いて自分の手でものを作ること」である。 「器用仕事」とか訳されているがいま一つしっくりこない。ブリコラージュでは資材の世界は閉じている。すなわち、そのときそのとき限られた道具と材料の集合で何とかするというのがここでのゲームの規則である。身体はそれを包む環境とのバランスのとれた相互作用のなかにある。いわば閉じた世界である。それを対象とする医療はブリコラージュ的であるべきであろう。環境の変化によって、新しい病気などは出現するが、基本的には身体は静態的均衡になかにある。具体の科学の知識の工作面を示すのがブリコラージュであるが、伝統医学は自然の「ありあわせ」の植物や動物などを薬として使用する。 近代医学は身体の概念を拡大していく。人間機械論から、臓器移植、再生医療など、身体を人間本来のものから絶えずはみ出してきた。さらに科学的概念を駆使して、合成された新薬を絶えず開発きた。このように近代医学は無限に拡大可能な科学的概念を使用する。 伝統医学は身体的記号(embodied symbol)を使う。脈状、舌の形状、色など言語化しにくい記号で判断する。陰陽五行説も基本は身体的メタファーである。患者を前にして、これらのシンボルをブリコラージュ的に組合せ、構造的な処方を出すのである。
著者
麦島 剛 上野 行良 中村 晋介 本多 潤子
出版者
福岡県立大学
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 = Journal of the Faculty of Integrated Human Studies and Social Sciences, Fukuoka Prefectural University (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.85-91, 2006-11-30

軽微な犯罪の早期解決がそれより重大な犯罪を抑止するという考え方を割れ窓理論 (broken windows theory)という。現在では、環境悪化放置の防止が地域の犯罪の抑止となる、 という観点から議論されることも多い。この理論の実践は1990年代半ばから米国において警察主導の取り組みとして始まった。最近は、日本でも地域住民主体による落書き防止などの取り組みとして盛んになっている。本研究は、地域環境悪化の放置および地域に立地する各種施設と、中学生の非行容認度との間にどのような関係があるのかを検討し、非行防止対策への手がかりとすることを目的とした。 福岡県内の中学2年生と矯正施設入所等中学生に対し、質問紙により以下の点を調査した。1)校区の悪化環境の放置に関する認識について、2)校区に立地する各種施設について、3)非行の容認について。その結果、悪化環境が放置されていると考える中学生は非行の容認度が高いことが示唆された。いっぽう少年院等の中学生は、悪化が放置された環境で暮らしていたと考える率が低かった。自らの住む環境の悪化が放置されていると感じるとき、中学生は非行を絶対悪だと考えなくなるが、放置状態に対して無頓着になると、実際に非行を犯す可能性が高まるとも考えられる。また、校区に、ギャンブル場などがあると答えた中学生において非行を許す程度が高かった。さらに、どんな施設であっても、立地する場合に環境が悪化していると認識する率が高かった。 以上の知見を踏まえると、落書きやゴミ放置などの公衆ルール違反を即急に解決することは、中学生が非行を許さないと考えることにつながる可能性がある。犯罪の低減と同様、割れ窓理論にもとづく具体的な取り組みが非行防止の一助となると考えられる。
著者
石崎 龍二
出版者
福岡県立大学
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 = Journal of the Faculty of Integrated Human Studies and Social Sciences, Fukuoka Prefectural University (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.99-109, 2011-01-08

情報処理教育の改善資料とするために、福岡県立大学人間社会学部学生の入学時のコンピュータスキルについて質問紙調査を行った。 2010年度の人間社会学部入学生のうち95.7%が、高等学校で「情報」を履修しており、主要アプリケーションソフトの操作の学習率は、 「ワープロソフトWord」80.4%、 「表計算ソフトExcel」 82.2%、「プレゼンテーションソフトPowerPoint」73.0%、「インターネットを使った情報検索」 80.4%と、高い値を示した。 一方、「ワープロソフトWord」 「表計算ソフトExcel」「プレゼンテーションソフト PowerPoint」「インターネットを使った情報検索」の各操作スキルについては、「十分できる」 又は「少しできる」と回答した比率が「ワープロソフトWord」72.4%、「表計算ソフトExcel」 38.0%、「プレゼンテーションソフトPowerPoint」56.4%、「インターネットを使った情報検索」 81.6%とばらつきが見られた。 パソコンの所有率と利用状況については、パソコンの所有率が74.2%、自宅・アパートからパ ソコンを使ったインターネットの利用率が57.1%と比較的高かった。しかし、1週間あたりのパ ソコンの利用頻度は、40.5%がパソコンをほとんど利用しないと回答しており、パソコンの利用も、「ホームページの閲覧」「ネットショッピング」への偏りがみられた。