著者
望月 賢二 福井 正二郎
出版者
魚雑
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.27-36, 1983

ボウズノ・ゼ<I>Sicyopterus japonicus</I>の上顎歯の形態・成長・更新等について調べた。予備粛は歯槽 (gun) 内部に発生し, 内部を移動しながら成長する。この成長の最後の段階において, 各粛の基部に1小骨が形成される.その後, 下方に移動し, 前上顎骨に固定され, 作用歯として用いられる.歯の更新において脱落した歯は, 上顎組織内で吸収されながら, 前上顎骨下端の腔所に引き込まれ, ここで完全に吸収される。このことから, 歯の成分を再利用する可能性があることが示唆された。この更新は体長の増加に比例して起り, 標準体長が1.1mm増加することに1回の割合である.またその頻度は, 標準体長が1日当り0.12mm増加する場合には平均9.2日に1回の割合である。歯がこのような短い周期で絶えず更新するのは, 餌として岩の表面で育つ付着藻類を掻き取るため, 上顎歯の損耗が著しいためと思われる.