著者
望月 賢二 福井 正二郎
出版者
魚雑
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.27-36, 1983

ボウズノ・ゼ<I>Sicyopterus japonicus</I>の上顎歯の形態・成長・更新等について調べた。予備粛は歯槽 (gun) 内部に発生し, 内部を移動しながら成長する。この成長の最後の段階において, 各粛の基部に1小骨が形成される.その後, 下方に移動し, 前上顎骨に固定され, 作用歯として用いられる.歯の更新において脱落した歯は, 上顎組織内で吸収されながら, 前上顎骨下端の腔所に引き込まれ, ここで完全に吸収される。このことから, 歯の成分を再利用する可能性があることが示唆された。この更新は体長の増加に比例して起り, 標準体長が1.1mm増加することに1回の割合である.またその頻度は, 標準体長が1日当り0.12mm増加する場合には平均9.2日に1回の割合である。歯がこのような短い周期で絶えず更新するのは, 餌として岩の表面で育つ付着藻類を掻き取るため, 上顎歯の損耗が著しいためと思われる.
著者
鈴木 清 木村 清志
出版者
魚雑
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.77-81, 1980

三重県沖で行われた深海カゴ網の試験操業によって漁獲された標本の中から5個体の.Psychrolutes inermis (Vaillant) が得られた.これは本邦初記録で, 和名としてクマノカジカを提唱する.本種は従来Cottun-culoides inermisとして記載されていたが, 近縁と思われるウラナイカジカやPsychrolutes phrictus Stein et Bondの記載と比較した結果, ウラナイカジカ属Psychrolutesに帰属させるべきであるとの結論に達した.本種は背鰭条数 (VII~VIII, 17~18), 胸鰭条数 (20~21) および側線が完全に退化していることなどにより近縁種と区別される.
著者
Bell Lori J.
出版者
魚雑
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.158-167, 1983
被引用文献数
2

イトビキベラの生殖行動が伊豆諸島の三宅島で1979年7~9月に観察された.ほとんどの雄はなわばり性を示したが, 雌は群れを形成していた.個々の雌は雄のなわばりを移動し, 生殖行動はランダムではないが乱交的であった.三宅島における生殖時期は5~9月と推定された.生殖行動は午後顕著になり, 3段階の産卵前行動, 即ち誇示, 雌への突進, 回転が観察された.産卵はペアで行なわれた.産卵時刻は日没が早くなるにつれて早くなった.産卵時刻と光の強さに関係のあることが示唆された.なわばりを持つterminalphaseの雄による産卵行動の妨害も観察された.In.itial phaseの雄は本研究の個体群の中には見られなかった.雄のなわばり性は産卵にともなうなわばりを防衛する行動に基づいていた.
著者
千田 哲資 木村 基文 神原 利和
出版者
魚雑
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.193-198, 1993

西太平洋熱帯域 (北緯2-8°, 東経140-151°) の漂流物に随伴する魚類の胃内容物を調べたところ, 5つの科に属する6種がウミアメンボを食していた.特にギンガメアジでは61%と高い捕食率であったのに対し, 他の7種のアジ科魚類130個体では1個体のツムブリを除いてウミアメンボを食していたものはなかった.捕食されていたウミアメンボのうち, 66.4%がツヤウミアメンボ, 32.7%がセンタウミアメンボであった.それぞれ1個体の雌雄のコガタウミアメンボが, 従来本種は分布していないと考えられていた北緯4。付近で採集したギンガメアジ (別個体) に食されていた.魚類は海鳥とともに, 遠洋性ウミアメンボの無視できない捕食者であると考えられた.
著者
石原 元
出版者
魚雑
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.241-285, 1987

北西太平洋産ガンギエイ属Rajaの標本を, この海域のほぼすべてのnominal speciesのtype標本と比較した結果, 従来イサゴガンギエイとされていた種は新種<I>R.(Okamejei) boesemani</I>であることが明らかとなった.北西太平洋産オカメエイ亜属<I>R.(Okamejei) </I>の中でこの種は, 尖った吻, 長いprocaudalおよびpost-dorsal length, 広いinterdorsal distance, 体盤上の黒色粒状斑点, 縦扁したscapulocoracoidを持つことなどで, キテンカスベ (新称) <I>R.(O.) hollandi</I> Jordan et Richardsonに極めてよく似ていて, Ui (1929) 以来両種は混同されてきた。しかしイサゴガンギエイはキテンカスベと, ややせまいinterdorsal distance, 黒色粒状斑点が集合したrosette-like patches, 胸びれ腋部の1対の黒色ring, 前側方突起が長く延長するatr 1 clasper cartilage, scapulocoracoidに円形のanterior fenestraを持つことなどで区別される.<BR><I>Raja porosa</I> G&uuml;ther, <I>R. fusca</I> Garman, <I>R. japonica</I> Nystr&ouml;m, <I>R. tobae</I> Tanaka, <I>R. katsukii</I> Tanaka, <I>R. meerdervoortii</I> sensu Jordan and Fowler (1903) はいずれも<I>R.(O.) kenojei</I> M&uuml;er et Henleのjunior synonymであることが判明したので, コモンカスベの学名は<I>R.(O.) kenojei</I>となる。<I>Raja (O.) meerdervoortii</I> Bleekerはvalidな種で, メダマカスベ<I>R. macrophtholma</I> Ishiyamaのsenior synonymであることが明らかと。なったガンギエイ<I>Raja kenojei</I> sensu Okada et al.(1935) は<I>R.(Dipturus) kwang</I>-tungensis Zhuのjunior synonymと判明した。以上のことからIshiyama (1967) が記載したテングエイ亜属<I>R.(Dipturus) </I>4, オカメエイ亜属<I>R.(Okamejei) </I> 7, 計11種の内5種は学名が変更される.本論文の1新種を加えて北西太平洋には, テングエイ亜属5, オカメエイ亜属6, 計11種のガンギエイ属魚類が分布することになった.この11種に北東太平洋産テングエイ亜属の2種, <I>R.(D.) binoculata</I> Girardと<I>R.(D.) rhina</I> Jordan et Gilbertを加えた13種の検索表を作成した.
著者
尼岡 邦夫
出版者
魚雑
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.153-157, 1974

種子島近海 (30°51'N, 129°01'E) の中層で, 水深32mから採集された1個体のダルマガレイ科 (Bothidae) の後期仔魚 (体長21.6mm) を調査した.この仔魚は体が長だ円形で, 短い背鰭第1棘と伸長した第2棘をもち, 尾舌骨と腰骨の腹縁に鋸歯を欠くなど明らかにナガダルマガレイ属 (<I>Arnoglossus</I>) の特徴をもっている.日本近海には本属の4種, ニホンダルマガレイ, ハナトゴダルマ, ナンヨウダルマ, ナガダルマガレイが生息している.この仔魚はすでに知られているニホンダルマガレイの仔魚によく似ているが, 背鰭条数 (II, 92), 臀鰭条数 (73) および脊椎骨数 (10+30=40) が少ない.これらの体節的形質に基づいて, この仔魚は南日本から南シナ海に広く分布するナガダルマガレイに同定される.また, この仔魚と同じ発育段階にあるニホンダルマガレイの仔魚と比較した結果, これらの体節的形質以外に, ナガダルマガレイの仔魚は体が高く, 吻・眼径・下顎・背鰭軟条・臀鰭軟条が短く, 吻突起がほとんど発達しないなどの相違のあることが判明した.
著者
Randall John E. 清水 長
出版者
魚雑
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.109-115, 1994

モーリシャスで採集した新種<I>Plectranthias pelicieri</I>を記載した.本種は他の種から, 前鯛蓋骨下縁に3本の前向棘があることで区別できる (外見で見にくい場合には触れると分かる).その他に背鰭はX, 16-17で細長い皮弁が数本の中程の長い棘の後端にある, 胸鰭は13軟条で全て不分枝, 側線は完全で側線鱗は29, 赤と黄の地に青から白の横縞の入る体色などの特徴がある.<BR>また生時の色彩が特徴なので, <I>P. gardineri</I> (Regan, 1908) のカラー写真を初掲載した.