著者
福山 惠士 澤田 秀之
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.1562-1570, 2011-04-15
被引用文献数
1

我々はこれまでに,形状記憶合金の細線を微小振動アクチュエータとして利用した触覚ディスプレイを開発し,素材の手触り感覚を呈示できることを見い出した.呈示触覚と実素材との比較実験を行った結果,触覚刺激のみによる呈示では個人差が大きく,同じ条件の刺激を呈示しても人によって異なる素材として認識される場合があることが分かった.人間は物体のテクスチャを触覚によって認識する際,視覚情報や体性感覚も有効に活用している.そこで,視覚ディスプレイ上に表示したテクスチャ画像に対応した触覚刺激を,マウス上に実装した薄型触覚ディスプレイによってユーザの手掌部に呈示するシステムを構築した.本システムは,複数のテクスチャ画像を視覚ディスプレイに表示し,ユーザがマウス操作によって各画像上でカーソルを移動させることにより,その速度に応じた触覚刺激を呈示して,能動的に物体の表面を撫でているかのような感覚を呈示することが可能である.システムの評価実験から,視覚情報が触覚認識に有意に影響を与えていることが示され,また触覚刺激と同時に適切な視覚情報を呈示することで,よりリアリティのある触覚感覚の呈示が可能となることが分かった.The authors have developed a tactile display using shape memory alloy wires, and constructed a presentation system of various texture sensations. However, different subjects perceive different sensations by one tactile stimulus generated by certain conditions. A human recognizes a texture of an object by referring not only to the tactile sensations, but also to the visual and other physical sensations. This paper introduces a texture presentation system, which consists of the tactile display and a visual display, and describes the evaluation of the system and effects of visual stimuli to texture sensations by several experiments.