著者
中村 光宏 林 恭守 澤田 秀之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. MUS,[音楽情報科学] (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.135-140, 2006-08-07
参考文献数
7

発話機構を全て機械系によって構成することにより、人間のような発話動作に基づいた音声の生成が可能となる。主に肺、声帯、声道部、鼻腔、聴覚部から構成される本発話ロボットは、声のピッチを変化させながら発話を生成することが可能である。ピッチ制御には複雑な声帯振動の解析が必要であるが、ここではシリコーンゴムを皮膚程度の柔度で成形した二枚の振動体の張力と、空気の流量を、モータにより操作することによって実現した。一方、調音のための共鳴管をシリコーンゴムで成形し、これを外側から棒で押し引きして声道断面積を変化させることにより、共鳴特性を変化させて母音や子音音声を生成することが可能である。本稿では、まず発話ロボットの構成について紹介し、次にニューラルネットワークを用いた聴覚フィードバック学習に基づく音声、音階の獲得と、楽譜作成インタフェースを用いた歌声生成について述べる。
著者
中野 航基 澤田 秀之
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.62, no.10, pp.1737-1747, 2021-10-15

シャボン膜に音波を照射すると,表面張力波が発生する.本稿ではこの現象を利用した音波の可視化と,音楽を視覚的に理解し楽しむための新しい手法を提案する.本稿では,シャボン膜上に生じる表面張力波の理論的考察をもとに,音の可視化実験から得られたデータと理論値とを比較,考察する.また,シャボン膜を撮影した映像から,膜に照射された音波の音高周波数を自動的に認識するアルゴリズムを実装し,実験により有効性の検証を行う.
著者
澤田 秀之 Thanh Vo Nhu
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

申請者らがこれまでに研究を進めてきた、人間と同等の発声器官を全て機械的に構成した発話ロボットを再設計し、より柔軟に発話動作を獲得できる機構を実装した。聴覚フィードバック学習によって、ロボットが聴取音声を基に自律的に発話動作を獲得し、任意の音声を生成することができる学習機構を実装するため、人間の脳機能を再現した学習モデルを構築した。更にFPGAによって、音声獲得の高速オンライン学習を実現した。これら発話器官を再現した機械モデルと、脳の音声学習機能に着目したオンライン学習モデルを統合した新しい発話ロボットを構築し、脳内モデルの学習過程、獲得される発話動作および、ロボットの生成音声の解析を行った。
著者
福山 惠士 澤田 秀之
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.1562-1570, 2011-04-15
被引用文献数
1

我々はこれまでに,形状記憶合金の細線を微小振動アクチュエータとして利用した触覚ディスプレイを開発し,素材の手触り感覚を呈示できることを見い出した.呈示触覚と実素材との比較実験を行った結果,触覚刺激のみによる呈示では個人差が大きく,同じ条件の刺激を呈示しても人によって異なる素材として認識される場合があることが分かった.人間は物体のテクスチャを触覚によって認識する際,視覚情報や体性感覚も有効に活用している.そこで,視覚ディスプレイ上に表示したテクスチャ画像に対応した触覚刺激を,マウス上に実装した薄型触覚ディスプレイによってユーザの手掌部に呈示するシステムを構築した.本システムは,複数のテクスチャ画像を視覚ディスプレイに表示し,ユーザがマウス操作によって各画像上でカーソルを移動させることにより,その速度に応じた触覚刺激を呈示して,能動的に物体の表面を撫でているかのような感覚を呈示することが可能である.システムの評価実験から,視覚情報が触覚認識に有意に影響を与えていることが示され,また触覚刺激と同時に適切な視覚情報を呈示することで,よりリアリティのある触覚感覚の呈示が可能となることが分かった.The authors have developed a tactile display using shape memory alloy wires, and constructed a presentation system of various texture sensations. However, different subjects perceive different sensations by one tactile stimulus generated by certain conditions. A human recognizes a texture of an object by referring not only to the tactile sensations, but also to the visual and other physical sensations. This paper introduces a texture presentation system, which consists of the tactile display and a visual display, and describes the evaluation of the system and effects of visual stimuli to texture sensations by several experiments.
著者
岩名 紘基 重宗 宏毅 澤田 秀之
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J106-C, no.2, pp.79-85, 2023-02-01

形状記憶合金(Shape-Memory Alloy: SMA)は,温度変化により相変態を起こすことで,記憶した形状に回復する合金である.この合金は,人工筋肉やばねのように様々な形で応用されている.従来のSMAアクチュエータは時間に対して緩やかに変形するものに応用されてきた.我々はこれまでに,SMAワイヤにパルス電圧を流すことによる数百Hzまでの振動現象を発見し,これを応用した微小振動アクチュエータを提案してきた.しかし,この現象の特性や原理については,未だ解明されていない点が多い.本研究ではSMAワイヤの振動現象の解明及び特性の理解のために,有限要素法を用いたシミュレーションと実際の振動現象の測定を行った.振動現象において,その振幅は幾つかの物理パラメータが寄与しており,これらを変化させると振幅のピークが変化することがわかった.この特性を応用することにより,SMAアクチュエータの効果的な利用が可能となる.
著者
澤田 秀之 橋本 周司
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1996, no.75, pp.7-12, 1996-07-27

声道モデルを機械系によって構成することにより、人間の発声機構を再現する試みを行っている。これによってより人間らしい音声の生成が可能になるばかりでなく、"歌う"楽器を作ることができると考えている。本モデルは主に、肺、声帯、声道部、聴覚部から成り、現在はピッチを変化させて、ハミングによる歌声を生成することが可能となっている。ピッチの生成には複雑な声帯振動の解析が必要であるが、ここでは声帯摘出者が用いる人工声帯を使用している。本報告では機械系による声道モデルを紹介し、ピッチの学習アルゴリズムと聴覚フィードバックによる適応制御について述べる。We are constructing a phonetic machine having a vocal chord and a Vocal tract based on mechatronics technology, and have so far developed a pitch generation part as a subsystem for melody synthesis to sing in humming. In the pitch generation, the analysis and mechanical simulation of the behavior of the vocal chords are required. The fluid mechanical system is, however, less stable to make the control difficult. This paper presents a singing instrument system together with an adaptive tuning algorithm of the physical mechanism using an auditory feedback. The mechanical method is considered to be promising to generate more natural voice than algorithmic sound synthesis methods.
著者
澤田 秀之 中村 祐
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、形状記憶合金ワイヤの微小振動子をアクチュエータとして用いた触覚呈示デバイスを構築し、指先感覚の喪失の程度を数値化する、指先触覚感度測定手法を開発した。まず高出力触覚アクチュエータの研究開発をおこない、皮膚の微小部位に様々な周波数の振動刺激を与えることで、触覚の高次知覚の呈示が可能であることを示した。更に指先触覚感度を定量的に測定するシステムを構築し、糖尿病などで引き起こされる末梢神経障害に起因した指先感覚の喪失程度を数値化する測定法の実装をおこない、被験者実験により有効性を示した。糖尿病の症状の進行度を定量的に計れることは、早期の診断や的確な治療に大きく貢献できる。
著者
水上 陽介 澤田 秀之
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.49, no.12, pp.3890-3898, 2008-12-15
被引用文献数
3

本稿では,形状記憶合金糸を振動アクチュエータとして利用した新しい触覚ディスプレイを提案し,各アクチュエータを駆動するパルス信号を,その発生確率密度によって制御して触覚感覚を呈示する手法について述べる.著者らは糸状に加工した形状記憶合金が温度により伸縮する特性を利用し,数Hz~数100 Hzのパルス信号によって微小振動を発生する小型アクチュエータを開発し,これを触覚呈示に用いる手法を提案してきた.本研究では,複数個の形状記憶合金糸のアクチュエータを面状に配置した触覚ディスプレイの構築を行った.本アクチュエータは,パルス信号を与えることによってその周期に同期して微小振動を発生するが,ランダム発生パルスによって各アクチュエータを駆動することにより,様々な触覚感覚を呈示できることが分かった.さらに,パルス信号の発生確率密度を時間的に変化させることにより,面のテクスチャや,物体をなぞった感覚を生成できることを明らかにした.本稿では,まずこれらの触覚感覚の呈示手法について述べ,実験による本ディスプレイの有効性の評価について述べる.The paper introduces the development of a compact tactile display employing novel micro-vibration actuators using a shape-memory alloy, and describes the presentation of various tactile sensations to a human skin by the control of pulse-signal probability density given to the vibration actuators. The authors have paid attention to the super-elasticity characteristics of a shape-memory alloy formed into a thread, and have so far developed a thin tactile device by driving each actuator with pulse current signal for generating vibrations. In this study, we found novel tactile sensations presented by driving actuators with randomly generated pulse signals. This paper describes the generation of touch feelings such as texture information of objects and a rubbing sensation by controlling the signal probability density, which was evaluated by the users' experiments.
著者
澤田 秀之 橋本 周司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.452-459, 1996-02-25
被引用文献数
21

意志や感情の伝達においては, 言語以上に非言語的手段によるところが大きいと言われる. 身振り手振りなどのジェスチャーはその代表的なものである. ジェスチャーにおいて人間の意志や感情は, 手などの位置よりもむしろ身体に加えられる力に顕著に現れると考えられる. ここでは運動中に働く力は加速度によって検出することができることに注目し, 3次元加速度センサによるジェスチャー認識を試みた. 試作システムでの実験では, 一連の3次元加速度データから運動の特徴量として, 加速度の変化, 回転力, 加速方向の分布などを求め, 標準パターンとのマッチングを行うことによって10種類程度のジェスチャーをほぼ100%の識別率で認識できることがわかった. また, 提案手法を適用して試作したジェスチャーによる実時間音楽制御システムについても述べる. 試作システムは, 従来の画像処理やデータグローブを用いた場合に比べて, テンポ検出の遅れも少なく構成も簡単であり, ジェスチャーによる柔軟で感性的なマン・マシンインタフェースの実現への手掛りが得られた.
著者
水上 陽介 内田 啓治 澤田 秀之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HCS, ヒューマンコミュニケーション基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.83, pp.67-72, 2006-05-22
被引用文献数
1

The paper introduces the development of a tactile device using a shape-memory alloy, and describes the information transmission by the higher-level perception such as the apparent movement and phantom sensation of the tactility. The authors paid attention to the characteristic of a shape-memory alloy formed into a thread, which changes its length according to its temperature, and developed a vibration-generating actuator electrically driven by periodic signals generated by current control circuits, for the tactile information transmission. By coupling the devices as a pair, an information transmission system was constructed for presenting the apparent movement of the tactility, to transmit quite novel sensation to a user. The information transmission by the device was tested by 10 subjects, and evaluated by questionnaires. The apparent movement was especially well perceived by users as a sensation of something running across fingers or as being tapped by something, according to the difference of signals given to the devices. Several users reported the rubbing sensation given by the AM, and we further experimented the presentation of the sensation in detail.