著者
福山 欣司
出版者
日本爬虫両棲類学会
雑誌
爬虫両棲類学会報 (ISSN:13455826)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.2, pp.116-125, 2008-09-30 (Released:2011-09-20)
参考文献数
40
被引用文献数
2
著者
福山 欣司
出版者
慶応義塾大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

日本産のカエル類に対する酸性雨の影響について調べるために、数種のカエルについて飼育実験を行った。今回は特に卵期と幼生期における影響について、アオガエル科のカジカガエル(Buergeria buergeri)、モリアオガエル(Rhacophorus arboreus)、シュレ-ゲルアオガエル(R. schlegelii)の3種を重点的に調査した。B. buergeriについては野外で採取した1ペアを実験室で産卵させて得た受精卵を実験に供した。R. arboreusとR. schlegeliiについては、野外に産みつけられている1卵塊を採取し、それを実験に供した。受精卵に対する酸の影響を調べるためにB. buergeriの受精卵をpHを3.0〜6.0に調整した飼育水にそれぞれ30卵ずつ入れ、20℃で孵化率を調べた。同じ実験をニホンアマガエル(Hyla japonica)とダルマガエル(Rana porosa brevipoda)についても行い、種間比較をした。その結果、pH3.5以下では3種とも孵化率0%となりB. buergeriでは4.0でも孵化率0%であった。これらより高いpHではいずれも場合も孵化率100%であった。幼生に対する酸の影響を調べるために、pHを3.0〜6.0に調整した飼育水に孵化直後の幼生(B. buergeri、 R. arboreus、およびR. schlegelii)を30匹または20匹ずつ入れ、20℃で飼育し、幼生の生存率と成長速度を調べた。その結果、B. buergeriでは、pHが低くなるにつれて生残率が低下する傾向があったが、他の2種については差は見られなかった。また3種ともpH5.0以下ではコントロールと比較して上陸時の体長が有意に小さかった。以上の結果から、オタマジャクシが流水で成長するB. buergeriは、他の種と比較して酸性に対する耐性がやや低いと考えられる。また、今回実験した3種すべてにおいてpH5.0を下回するような酸性条件では、卵や幼生にダメ-ジを与える可能性があると考えられる。