著者
福本 一彦 勝呂 尚之 丸山 隆
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.47-53, 2008-05-30 (Released:2018-02-09)
参考文献数
22
被引用文献数
1

栃木県大田原市羽田ミヤコタナゴ生息地保護区のミヤコタナゴの減少原因を明らかにするため、羽田産マツカサガイ及びシジミ属の産卵母貝適性実験を行った。その結果、羽田産マツカサガイは久慈川産マツカサガイに比べて産卵母貝としての利用頻度が低く、産着卵数が少なく、かつ卵・仔魚の生残率も著しく低いことが確かめられた。また、シジミ属は産卵母貝としての利用頻度が低く、産卵しても孵化しないことが裏付けられた。以上の結果から、1990年代後半の羽田ミヤコタナゴ個体群の急激な衰退の過程において、水源の水質悪化によって引き起こされたマツカサガイの生理的異常に起因するミヤコタナゴの産卵頻度の低下と、卵・仔魚の生残率の大幅な低下が重要な役割を演じた可能性が高いと考えられた。
著者
宮本 康 福本 一彦 畠山 恵介 森 明寛 前田 晃宏 近藤 高貴
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.59-69, 2015-05-30 (Released:2017-11-01)
参考文献数
49
被引用文献数
2

鳥取県ではカラスガイの絶滅が危惧されているが、本種の個体群構造や繁殖の実態が明らかにされていない。そこで本研究では、本種の分布が確認されている3つの水域を対象に、サイズ組成、母貝の妊卵状況、本種の生息域における魚類相、およびグロキディウム幼生の宿主適合性を明らかにするための野外調査と室内実験を行った。多鯰ヶ池ではカラスガイのサイズ組成が大型個体に偏っていたことから、稚貝の加入が近年行われていないことが示唆された。しかし、母貝が幼生を保有していたこと、当池でブルーギルとオオクチバスが優占していたことから、これらの外来魚による幼生の宿主魚類の駆逐が本種の新規加入の阻害要因になっていることが併せて示唆された。一方で、他の2つのため池では大型個体に加えて若齢の小型個体も少数ながら発見された。これらの池ではブルーギルとオオクチバスが確認されない反面、室内実験より幼生の宿主と判定されたフナ属魚類が優占することが明らかになったことから、新規加入が生じる条件が揃っていることが示唆された。以上の結果より、現在の鳥取県ではカラスガイの個体群動態が魚類群集に強く依存していること、そしてブルーギルとオオクチバスが優占する多鯰ヶ池は本種個体群の存続が危ういことが示唆された。以上の結果を踏まえ、最後に当県におけるカラスガイ保全のための提言を行った。
著者
福本 一彦 勝呂 尚之 丸山 隆
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.47-53, 2008-05-30
被引用文献数
1

栃木県大田原市羽田ミヤコタナゴ生息地保護区のミヤコタナゴの減少原因を明らかにするため、羽田産マツカサガイ及びシジミ属の産卵母貝適性実験を行った。その結果、羽田産マツカサガイは久慈川産マツカサガイに比べて産卵母貝としての利用頻度が低く、産着卵数が少なく、かつ卵・仔魚の生残率も著しく低いことが確かめられた。また、シジミ属は産卵母貝としての利用頻度が低く、産卵しても孵化しないことが裏付けられた。以上の結果から、1990年代後半の羽田ミヤコタナゴ個体群の急激な衰退の過程において、水源の水質悪化によって引き起こされたマツカサガイの生理的異常に起因するミヤコタナゴの産卵頻度の低下と、卵・仔魚の生残率の大幅な低下が重要な役割を演じた可能性が高いと考えられた。
著者
宮本 康 福本 一彦 畠山 恵介 森 明寛 前田 晃宏 近藤 高貴
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.59-69, 2015

鳥取県ではカラスガイの絶滅が危惧されているが、本種の個体群構造や繁殖の実態が明らかにされていない。そこで本研究では、本種の分布が確認されている3つの水域を対象に、サイズ組成、母貝の妊卵状況、本種の生息域における魚類相、およびグロキディウム幼生の宿主適合性を明らかにするための野外調査と室内実験を行った。多鯰ヶ池ではカラスガイのサイズ組成が大型個体に偏っていたことから、稚貝の加入が近年行われていないことが示唆された。しかし、母貝が幼生を保有していたこと、当池でブルーギルとオオクチバスが優占していたことから、これらの外来魚による幼生の宿主魚類の駆逐が本種の新規加入の阻害要因になっていることが併せて示唆された。一方で、他の2つのため池では大型個体に加えて若齢の小型個体も少数ながら発見された。これらの池ではブルーギルとオオクチバスが確認されない反面、室内実験より幼生の宿主と判定されたフナ属魚類が優占することが明らかになったことから、新規加入が生じる条件が揃っていることが示唆された。以上の結果より、現在の鳥取県ではカラスガイの個体群動態が魚類群集に強く依存していること、そしてブルーギルとオオクチバスが優占する多鯰ヶ池は本種個体群の存続が危ういことが示唆された。以上の結果を踏まえ、最後に当県におけるカラスガイ保全のための提言を行った。