著者
福本 昌人
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.88, no.1, pp.II_21-II_28, 2020 (Released:2020-05-27)
参考文献数
12

営農形態の変化に対応して試験的に水利権上の代かき期の前倒しが行われることがある.本研究では, その前倒しに伴う代かきの早期化状況の調査においてSentinel-1衛星の合成開口レーダ(SAR)データが有効利用できるか否かを明らかにするため, 同データと圃場区画データを用いて水田の湛水有無を圃場毎に判別(後方散乱係数の圃場平均値がある閾値以下の圃場を「湛水あり」と判定)した場合の判別精度を検証した.その検証は, 同じ快晴日にSentinel-1衛星とSentinel-2衛星の両方で観測が行われていた調査エリアにおいて行い, Sentinel-2衛星のマルチスペクトルデータによる湛水有無の判別結果を検証用データとして用いた.判別精度は, VV偏波が79.1%, VH偏波が75.8%で, VV偏波のSAR画像の方が判別に適していた.上記のような調査においてSentinel-1衛星データは十分に有効利用できると判断された.
著者
福本 昌人
出版者
システム農学会
雑誌
システム農学 (ISSN:09137548)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.15-23, 2019-10-29 (Released:2020-07-03)
参考文献数
9

農業用水の利用実態を把握する上で、水田の取水開始時期を把握することが重要になっている。その取水開始時期を複数のSentinel-2衛星データ(マルチスペクトル画像;無償で利用可能)を用いて広域的に把握する手法を開発した。本手法では、①短波長赤外バンドのデータの解像度アップ、②修正正規化水指数(MNDWI)画像の作成、③二値化画像の作成、④湛水有無の判定、⑤取水有無の判定、⑥取水開始時期の判定、という手順で、圃場毎に取水開始時期を把握する。4月~6月に観測された8つのSentinel-2衛星データと圃場区画データを用いて本手法により対象地区の各圃場の取水開始時期を把握した。その結果、4月14日~4月20日に取水が開始された圃場が最も多かった。対象地区の一部において取水有無の判定結果に関する精度検証と内訳の分析を行った。その結果、5月15日には98%の正答率で取水有無の判定がなされていた。また、6月4日には稲の生育が進んでいた多くの圃場が「湛水なし」と判定されたが、それらは4月~5月に少なくとも一度「湛水あり」と判定されていたので、「取水あり」と判定された。したがって、本手法を適用すると、高い精度で取水開始時期が把握できる。
著者
福本 昌人 吉迫 宏 小川 茂男
出版者
農業・食品産業技術総合研究機構農村工学研究所
雑誌
農村工学研究所技報 (ISSN:18823289)
巻号頁・発行日
no.210, pp.307-317, 2010-03
被引用文献数
1

農林水産省は、耕作放棄地の解消を図るため、耕作放棄地全体調査と呼ばれる現地調査を市町村・農業委員会を通じて2008年度に全国規模で実施した。この調査は、市町村全域のすべての農地を踏査し、耕作放棄地の位置と状況を一筆毎に把握するものである。この調査で「農地」と判断された耕作放棄地は営農再開や保全管理(草刈り、耕起等)が求められ、その実施を確認する追跡調査が行われることになっている。しかし、その実施が確認されても、その後再び耕作放棄地になる可能性がある。また、2008年度には耕作放棄地でなかった農地が新たに耕作放棄地になる可能性もある。このため将来、再度、現地調査を行う必要が生じると考えられる。しかし、現地調査は多大な労力を要し、容易には実施できないため、現地調査の省力化が喫緊の課題となっている。本研究では、上記の調査で取得したADS40によるオルソ画像を用いて耕作放棄田等の目視判読性を雑草タイプ等の面から詳細に検討し、航空撮影画像を用いた耕作放棄田の調査手法を事例的に提案する。なお、耕作放棄地の現地調査のためだけに航空撮影を行うことはコスト的に難しいが、別途、水土里情報利活用促進事業等により、地理情報システム(GIS)データの整備・更新のために最新のオルソ画像が作成されていれば、そのオルソ画像を現地調査に利用することができる。また、ここでは目視判読はパソコンのディスプレイにオルソ画像を表示して行うが、オルソ画像のプリントも現地調査において有用であることから、そのオルソ画像プリントの活用についても述べる。