著者
樫見 由美子 福本 知行
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究によれば、不法行為責任の加害者が責任無能力者である場合に、損害賠償責任を免責する制度趣旨は、法命令の意味を理解できず、また自らの行為の結果を認識できない者、その多くが精神的にも経済的にも自立できない弱者に対して、その者の将来の成長や生活を著しく脅かすことのないように損害賠償責任を免除することにあると解釈する。そして、その趣旨からは加害者の賠償責任に関して、交通事故のように自賠責保険等による責任の補てんが可能であるか、加害者である被用者個人から賠償責任が使用者に転嫁される使用者責任の場合には、加害者の責任能力の有無を問うことなく、運行供用者及び使用者の免責が認められるべきではないとする。