著者
今尾 昭夫 木原 康孝 福桜 盛一
出版者
島根大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

3年間にわたる本研究成果の概要は、以下のようである。1.今尾は、作物の有効な裁培手法として多用されているビニールマルチが、傾斜農地の縦畝に利用された場合の土壌侵食の挙動について実証的な検討を行った。実験は自然降雨、及び人工降雨を対象として、既設の野外傾斜土槽(野外実験)と室内可傾式土槽(室内実験)を利用して行い、粒度組成の異なる3種のマサ土を供試した。その主な結果を示せばつぎのようである。(1)野外実験の場合:降雨強度が大きくなるとビニールマルチ敷設による土壌侵食防止効果があると言えるが、それが小さい時には畝間の土壌侵食を促進する傾向がある。従って、畝間へ敷きワラ等のマルチングを敷設することが必要である。(2)室内実験の場合:大きな降雨強度の下における実験であるために、(1)と同様な結果を得ているが、細粒部分を多く含む土が土壌侵食量を増加させる傾向を示す。(3)両実験ともに、畝から畝間への土壌飛散、供給土量が予想外に多く、これらは降雨強度、傾斜度、及び粒度組成に密接に関連し、傾斜農地の土壌侵食に影響を与える。2.木原・福桜は、畑地におけるマルチングの効果を検証するために必要な土壌中の水分動態を正確に把握することにより、潅水量、及び潅水強度が土壌中への水分の浸潤に与える影響について実験的な検討を行った。その主な結果を示せば次のようである。(1)浸潤過程における水分動態は潅水量が支配的な要因となる。(2)現場圃場における水分動態は、潅水量や降雨量が多い場合、その相当量が下方浸透し、これは長期間継続する。(3)マルチングにより蒸発は抑制されているが、蒸散があるにも拘らず水分減少は僅かで、下層から水分の毛管補給があるためと考えられる。主として以上のような研究成果が得られたが、問題点も多く今後の研究にまつところが多い。
著者
田中 礼次郎 福島 晟 松井 佳久 鳥山 晄司 福桜 盛一 今尾 昭夫
出版者
島根大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1987

1.暗渠の被覆材として、発泡スチロ-ル、モミガラ、園芸用疎水材を用いて現場試験、実験室試験によりその排水効果の比較を行った。その結果安価で耐用年数の期待できる被覆材として、発泡スチロ-ルを使用することの可能性を示唆した。2.干拓地土壌の牧草栽培による土壌構造変化の挙動と、土壌生態系の有機物への作用による土壌団粒化促進効果を各種調査、実験により明らかにした。3.干拓地の水や土壌中の陽イオン濃度の分析から、相互に相関の高い土壌イオンの存在すること、また干拓地内に地下浸透する湖水量は、湖水位と対応して周期的に変化する。湖水の浸透は土壌イオンの組成を変化させることなどを明らかにした。4.中海干拓彦名地区の土壌乾燥経過を各種試験で調査し、排水溝の効果が顕著であること、軟弱埋立て粘土層の圧密沈下量と乾燥沈下量の観測値と計算値の比較およびトラフィカビリチ-の経年変化を示した。5.雨水流モデルと長短期流出両用モデルを併合した流出モデルによる流出解析法を提示するとともに、その適応性を中海流入河川の高水、低水について検証した。また干拓地における長期および短期流出解析が可能なKWSTモデルを提案した。6.中海水域への代表流入河川である斐伊川、飯梨川等の日流量について年、および季節的特性を流況曲線等を用いて分析し、比較検討した。