著者
堀越 一孝 伊藤 恒 福武 滋 阿部 誠也 角田 賢史 渡邊 宏樹 亀井 徹正
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.601-605, 2019 (Released:2020-06-02)
参考文献数
7
被引用文献数
1

Hybrid Assistive Limb医療用下肢タイプ(HAL®)による歩行運動療法を継続した筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)の1例を報告する.症例は61歳女性.4点杖による介助歩行が可能で,座位・立位姿勢にて頸部と体幹の前屈を認めていた.Edaravoneの経静脈的投与と並行して,歩行能力の維持を目的として1クールあたり20分/日×9日を基本とするHAL®による歩行運動療法を開始した.1クール目の終了時には歩行機能が改善し,14~31日のインターバルをおきながら歩行運動療法を継続した.経過を通じて歩行機能は緩徐に低下したが,歩行運動療法の各クール終了時には歩行機能の改善が認められた.また,座位での頸部・体幹の前屈が一過性に改善した.HAL®による歩行運動療法を継続することにより,短期的ではあるが,歩行機能と体幹機能の改善が期待できることが示唆された.
著者
伊藤 恒 山本 一徹 福武 滋 山口 敏雄 平 孝臣 亀井 徹正
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.43-46, 2020 (Released:2020-07-21)
参考文献数
13

薬剤抵抗性の本態性振戦(essential tremor:ET)10例(男性8例,女性2例,67.1±17.5歳,全例右利き)に対してMRガイド下集束超音波(MR–guided focused ultrasound:MRgFUS)による左視床中間腹側核(ventral intermediate nucleus:Vim)破壊術を行い,12か月後までの有効性と安全性を検討した.治療直後から全例で右上肢の振戦が改善し,2例で振戦が再増悪したものの,右上肢のClinical Rating Scale for Tremorの平均値は12か月後まで約60%の低下が持続した.しかし,Quality of Life in Essential Tremor QuestionnaireのGlobal Impression Scoreの平均値は有意な改善を認めなかった.有害事象の大部分は軽微かつ一過性であり,治療から6か月後以降に新規の有害事象は生じなかった.MRgFUSによる片側Vim破壊術は薬剤抵抗性のETに対する治療選択肢の1つであるが,振戦の改善効果を高めるとともに,より多数例を長期に検討する必要がある.