著者
伊藤 恒 大嵩 紗苗 山田 仁美 大塚 美幸 原 千春 亀井 徹正
出版者
特定非営利活動法人 日本禁煙学会
雑誌
日本禁煙学会雑誌 (ISSN:18826806)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.4-6, 2016

双極性障害を合併した性同一性障害の1例に対してバレニクリンによる禁煙治療を行った。外来受診時には患者の希望により姓で呼称した。バレニクリンの有害事象を認めることなく12週後禁煙に成功したが、再喫煙を繰り返した。対人的な精神的ストレスを感じた際に再喫煙していることが判明したので、ストレスを自覚した際の対処法を提案したところ、禁煙を継続することができた。性同一性障害患者に対してバレニクリンによる禁煙治療を行う際には併存する精神疾患の症状増悪や希死念慮の出現に注意するとともに、性の多様性を理解して対応することが重要である。
著者
堀越 一孝 伊藤 恒 福武 滋 阿部 誠也 角田 賢史 渡邊 宏樹 亀井 徹正
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.601-605, 2019 (Released:2020-06-02)
参考文献数
7
被引用文献数
1

Hybrid Assistive Limb医療用下肢タイプ(HAL®)による歩行運動療法を継続した筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)の1例を報告する.症例は61歳女性.4点杖による介助歩行が可能で,座位・立位姿勢にて頸部と体幹の前屈を認めていた.Edaravoneの経静脈的投与と並行して,歩行能力の維持を目的として1クールあたり20分/日×9日を基本とするHAL®による歩行運動療法を開始した.1クール目の終了時には歩行機能が改善し,14~31日のインターバルをおきながら歩行運動療法を継続した.経過を通じて歩行機能は緩徐に低下したが,歩行運動療法の各クール終了時には歩行機能の改善が認められた.また,座位での頸部・体幹の前屈が一過性に改善した.HAL®による歩行運動療法を継続することにより,短期的ではあるが,歩行機能と体幹機能の改善が期待できることが示唆された.
著者
伊藤 恒 山本 一徹 福武 滋 山口 敏雄 平 孝臣 亀井 徹正
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.43-46, 2020 (Released:2020-07-21)
参考文献数
13

薬剤抵抗性の本態性振戦(essential tremor:ET)10例(男性8例,女性2例,67.1±17.5歳,全例右利き)に対してMRガイド下集束超音波(MR–guided focused ultrasound:MRgFUS)による左視床中間腹側核(ventral intermediate nucleus:Vim)破壊術を行い,12か月後までの有効性と安全性を検討した.治療直後から全例で右上肢の振戦が改善し,2例で振戦が再増悪したものの,右上肢のClinical Rating Scale for Tremorの平均値は12か月後まで約60%の低下が持続した.しかし,Quality of Life in Essential Tremor QuestionnaireのGlobal Impression Scoreの平均値は有意な改善を認めなかった.有害事象の大部分は軽微かつ一過性であり,治療から6か月後以降に新規の有害事象は生じなかった.MRgFUSによる片側Vim破壊術は薬剤抵抗性のETに対する治療選択肢の1つであるが,振戦の改善効果を高めるとともに,より多数例を長期に検討する必要がある.