著者
大田 陸夫 福永 二郎
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1990

溶融法によるガラスの作製においては高融点系では溶融温度に実験上の制限がある一方,結晶化しやすい系や組成ではガラスを得ることが出来ない,ゾルゲル法においてはゾル溶液からゲルを経て,ガラスを作製するので溶融法における高融点のため実験不能という事態は避けられる。しかしながらゲルの生成能はガラスの生成能と深く関連しており,ゲルからガラスを作製する上でもゲルの熱的安定性が問題になる,本研究では基本的な系として,B_2O_3ーNa_2O,B_2O_3ーNa_2OーAl_2O_3およびSiO_2ーNa_2O系をモデルとしてとり上げ,ゾルゲル法によるゲルの熱的安定性を調べ,ガラス化領域とゾルゲル法によってどの程度広げられるかという問題に答えるための研究を行った。まず上記の系のゲル化領域とゲルの熱的安定性を調べた。ゲル化領域に対する水分,塩酸,アンモニアの添加の影響と検討した。ゲル化領域はB_2O_3ーNa_2O系ではB_2O_3=100および<60モル%以外の組成域であった。B_2O_3ーNa_2OーAl_2O_3系ではB_2O_3ーNa_2O系で結晶化した領域がゲル化するところも現れた。SiO_2ーNa_2O系ではゲル化領域はSiO_2=60ー100モル%組域であった。ゲル化領域は水の添加によって殆ど変化せず,塩酸の添加によってはゲル化領域はSiO_2=100%組成似外は存在しなかった。ゲル化特間は水分またはアンモニアの添加とともに短縮した,ゲルを昇温速度5℃/分でDTA測定を行い,発熱ピ-クから結晶開始温度Tcを決定した。T_LはDTAおよび加熱マテ-ジ付き顕微鏡によって直接観察して求めた。溶融法によっても同上の系のガラス化領を求め,DTA測定を行った。B_2O_3ーNa_2O系のTc/T_L比はB_2O_3=70モル%および80モル%にそれぞれ極大値および極小値が現れた。ガラスについても同様な組成依存性が現れることを確認した,Tc/T_L比はゲルやガラスの熱的安定性を示とと同時にその生成能を示す示標であることが確かめられた。Tc/T_Lー臨界冷却速度Qとの対応関係を実験値から検討した。更に理論的考察を加えた。
著者
趙 修建 福永 二郎 吉田 直次郎 井原 将昌
出版者
公益社団法人日本セラミックス協会
雑誌
窯業協會誌 (ISSN:00090255)
巻号頁・発行日
vol.93, no.1083, pp.708-716, 1985
被引用文献数
4

CaO-Ga<sub>2</sub>O<sub>3</sub>-B<sub>2</sub>O<sub>3</sub>系のガラス化領域を決定し, その領域内のガラス構造をラマン分光法により研究した. ガラス化領域はCaO-Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub>-B<sub>2</sub>O<sub>3</sub>系と比べてGa<sub>2</sub>O<sub>3</sub>/CaO比=2付近の組成まで広がっている. 高ホウ素含有ガラスのラマンスペクトルはボロクソール群, 一つあるいは二つのBO<sub>4</sub> 4面体を含む6員環ホウ酸塩群, ピロボレート群及びオルソボレート群が存在し, Ga<sup>3+</sup>が酸素と4配位していることを示した. B<sub>2</sub>O<sub>3</sub>をCaOで置換していくと, ホウ酸塩群はBO<sub>4</sub> 4面体を多く含むものに変化し, 更に非架橋酸素を含むホウ酸塩群に変化する. 低ホウ素含有ガラスではB<sub>2</sub>O<sub>3</sub>は主にオルソボレート群として存在するが, 4面体を含むホウ塩酸群も少量存在している. ほとんどのGa<sup>3+</sup>が酸素と4配位し, 相対的にGa<sub>2</sub>O<sub>3</sub>含有量の多いガラスではCaO・2Ga<sub>2</sub>O<sub>3</sub>結晶と類似した構造が存在する. この領域でGa<sub>2</sub>O<sub>3</sub>をCaOで置換していくと, オルソボレート群の量が増加し, 4面体を含むホウ酸塩群の量が減少し, ガレート網目構造が非架橋酸素を多く含むものに変化する. CaO-Ga<sub>2</sub>O<sub>3</sub>-B<sub>2</sub>O<sub>3</sub>系ガラス中ではAl<sub>2</sub>O<sub>3</sub>系に比べ, CaO-Ga<sub>2</sub>O<sub>3</sub> 2成分網目構造が広い領域で存在する.