著者
戸田 光敬 福田 幾光 齊藤 保二
出版者
Japan Veterinary Medical Association
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.9, no.7, pp.325-328, 1956
被引用文献数
1

私共は東京附近において捕獲された野犬血清中の日本脳炎仲山株ウイルスに対する補体結合抗体の陽性, 陰性率および補体結含抗体の推移を本誌に既報したが, 今回は本ウイルスを人工的に子犬に接種した場合の子犬の感染態度および血清中の補体結合抗体の消長を検討した. その結果, 入工的に本ウイルス塗接種した子犬は僅か1頭を除き, 他はすべて接種部位に関係なく, 接種後初期に軽度の体温上昇, 食欲, 元気の減退を認める以外感染を調する症状を認めなかった. 人工的に脳内に本ウイルスを接種し, その後マウスでウイルスの回収試驗を行った所, 普通の状態では子犬脳内は本ウイルスの増殖に不適当ではないかと思われる成績を得た. また本ウイルスの人工接種を受けた子犬の血清中には補体結合抗体を産生するが, 本抗体の推移は接種部位, あるいは子犬の日令の差により多少の相異を認めた. しかしながら本抗体は相当長期間消失しないもののようである.