著者
海保 邦夫 古賀 聖治 大庭 雅寛 高橋 聡 福田 良彦
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2009年度日本地球化学会第56回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.19, 2009 (Released:2009-09-01)

浅海層の炭酸塩中の硫酸塩の硫黄同位体比変動と、深海堆積物の硫化物硫黄同位体比変動は、大量のH2Sがペルム紀末の100万年間で強還元的海洋に蓄積し、蓄積されたH2Sのほとんどが大量絶滅と同時に2万年間で海洋中深層から海洋表層と大気へ放出されたことを示唆する。また、南中国で、硫酸塩硫黄同位体比の増加期と減少時に、緑色硫黄細菌起源と考えられるアリルイソプレノイドの濃集が認められた。緑色硫黄細菌の存在は、光合成帯が還元環境であったことを示すので、深海に蓄積されたH2Sが表層へ出て来たことを示す。大気化学反応モデルを用いて、H2S 大量放出時のO2 濃度の変化を計算した結果、大気酸素濃度は、硫化水素の大気への放出時に相対的に約40%減少したことになる。硫化水素の酸化に伴うこの大気酸素濃度の急減は、海洋無酸素水塊の発達を助長し、ペルム紀末の生物大量絶滅に加担したかも知れない。