著者
小田 祥久 福田 裕穂
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.12, pp.795-801, 2013-12-01 (Released:2014-12-01)
参考文献数
31
被引用文献数
1

セルロース微繊維を主成分とした細胞壁の沈着パターンは植物細胞の形態と機能を決める要因の一つである.木部細胞は強固な二次細胞壁を沈着することにより,植物体を力学的に支えると同時に通導組織として機能している.木部組織は木部繊維,原生木部道管,後生木部道管,仮道管などからなるが,それぞれの細胞が特有の二次細胞壁パターンを形成することにより,高度な機能分化を実現している.このような二次細胞壁の沈着パターンは,一次細胞壁と同様にセルロース合成酵素複合体の軌道を制御する表層微小管の配向に大きく依存している.われわれは転写因子を用いた in vitro 木部道管分化誘導系を確立することにより,木部細胞分化における特異的な遺伝子発現解析および機能解析,また,ライブイメージングによるタンパク質の動態,相互作用の解析を実現した.これらの解析手法を用いて,微小管付随タンパク質MIDD1と ROP GTPase が二次細胞壁のパターン形成において重要な役割を果たしていることを明らかにした.本稿ではこれらの研究成果を中心に,木部細胞における二次細胞壁パターンの制御機構に関する最近の知見を解説する.
著者
名川 信吾 澤 進一郎 岩本 訓知 加藤 友彦 佐藤 修正 田畑 哲之 福田 裕穂
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集 第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.291, 2006 (Released:2006-12-27)

幹細胞の分化・維持に働く分子機構について明らかにするために、茎頂分裂組織 ( SAM ) 及び維管束幹細胞である前形成層をモデル系とし、SAM 及び前形成層関連遺伝子を複数同定してきた。今回はそれらの遺伝子のうち、葉酸代謝に関わる GGH 遺伝子の機能解析について報告する。GGH タンパク質は葉酸のグルタミン酸鎖切断能を持つことが明らかとなっている。GGH 遺伝子の過剰発現時には子葉の融合、ロゼット葉形成の遅延、茎頂分裂領域の縮小といったメリステム活性の低下を示唆する異常な表現型が観察された。一方、シロイヌナズナゲノム中に三つ存在する GGH 遺伝子全ての発現抑制植物体では、葉身における異所的な分裂組織形成、花器官数の増加、小花柄における苞葉の形成というメリステム活性の上昇を示唆する典型的な表現型が観察された。また、葉酸生合成阻害剤添加により根の伸長阻害や茎頂分裂領域の縮小が導かれ、その効果は多グルタミン酸鎖型葉酸の添加により回復した。一方、単グルタミン酸鎖型葉酸添加によっては回復することが出来なかった。さらに、培養細胞の管状要素への分化誘導時において、多グルタミン酸鎖型葉酸は阻害的に働くのに対し、単グルタミン酸鎖型葉酸は阻害効果を持たなかった。これらの結果は、多グルタミン酸鎖型葉酸が幹細胞の未分化状態の維持に必須であることを示唆しており、これをもとに分化段階に応じた GGH の役割について考察する。