著者
國宗 勇希 岡山 直子 児玉 雅季 森重 彰博 中原 由紀子 深野 玲司 岩永 隆太 前田 訓子 岡田 真希 木村 相泰 福田 進太郎 末廣 寛 伊藤 浩史
出版者
一般社団法人 日本遺伝性腫瘍学会
雑誌
遺伝性腫瘍 (ISSN:24356808)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.104-108, 2023-12-15 (Released:2023-12-15)
参考文献数
11

Li-Fraumeni症候群(Li-Fraumeni syndrome;LFS)は,TP53の生殖細胞系列の病的バリアントによって発症する遺伝性疾患である.症例は3人の子の母親で,第1子はこれまでに5度悪性腫瘍に罹患し,第2子も骨肉腫に罹患している.母親は第3子(未発症)の出産9カ月後に肝臓の絨毛癌のため40歳で死亡している.第1子はTP53の生殖細胞系列病的バリアントが確認され,父親は当時未発症であったが,同じ病的バリアントの保因者であり,その後前立腺癌のため亡くなった.今回,第2子の結婚に伴う遺伝カウンセリングの過程で,LFS病的バリアント保持者の配偶者に妊娠を契機に絨毛癌が発生するとの報告を知り,20年前に亡くなった母親の組織標本から遺伝子検査を試みた.TaqMan Probe法で同じ病的バリアントを検出し,本症例もLFS病的バリアント保持者(父親)から,妊娠を契機に病的バリアントが胎児,胎盤を通じて何らかの機序で配偶者(母親)へ移行し,まれな肝臓の絨毛癌を発症し亡くなられたと推察した.
著者
松隈 聰 長島 淳 原田 俊夫 河岡 徹 平木 桜夫 福田 進太郎
出版者
山口大学医学会
雑誌
山口医学 (ISSN:05131731)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1+2, pp.57-61, 2012-05-01 (Released:2013-03-04)
参考文献数
16

症例は40代男性.入院2週間前から心窩部痛,背部痛を生じ,1週間前より微熱,全身倦怠感も伴うようになった.その後,40℃の発熱を来たし,体動困難となったため,救急車で当院搬送となった. 来院時,心窩部で肝臓を触知,軽度の圧痛を伴っていた.血液検査では高い炎症所見と軽度の肝酵素の上昇を認めた.腹部造影CT検査で肝左葉に70㎜大の境界明瞭,分葉形の低吸収域を認め,肝膿瘍と考えられた.経皮経肝膿瘍ドレナージを行い,赤褐色調の排液を認めた.細菌性肝膿瘍を考えセフメタゾール投与を開始したが,3日後にも解熱しないため,アメーバ性肝膿瘍を疑いメトロニダゾール2g/日の経口投与を開始,翌日から速やかに解熱した. 肝膿瘍内容液の培養では赤痢アメーバを検出できなかったが,血清抗体検査でアメーバ性肝膿瘍の診断に至った. 入院24日目に施行したCT検査では膿瘍腔はほぼ消失していたため,ドレーンを抜去,入院33日目に軽快退院となった. 入院中に施行したHIVスクリーニング検査の結果は陽性で,また患者本人から男性同性愛者であるとの情報が得られた. 肝膿瘍の原因として赤痢アメーバを鑑別に挙げることは重要であるが,男性同性愛者にみる腸管感染症(Gay bowel syndrome)からHIVの可能性を考え,未診断のHIVを拾い上げる努力が,さらに重要なことと考えられた.