著者
関口 辰夫 丸井 英明 秋山 一弥
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.377-387, 2003-07-15 (Released:2009-08-07)
参考文献数
23

平成12年6月18日,新潟県浅草岳でブロック雪崩災害が発生し4名の犠牲者を出した.ブロック雪崩は,浅草岳山頂北西側のヤスノ沢右支谷上流部,地すべり滑落崖の稜線付近で発生した.崩落した雪崩ブロックは筋状地形に沿って流下し,斜面下方の雪渓で犠牲者を直撃した.災害発生直後に撮影された空中写真の判読によれば,災害発生斜面の周辺では,ブロック雪崩が発生している斜面やブロック雪崩発生の可能性が高い斜面が多数みられた.判読されたブロック雪崩はいずれも災害発生斜面と同様に遷急線上から発生し,見通し角が30~42°,到達距離が90~350mとなり,到達距離や見通し角は,既往の全層雪崩や表層雪崩の見通し角や到達距離と同程度であった.また,周辺のブロック雪崩発生の可能性が高い斜面に存在する残雪の多くは,遷急線直上部に位置し,クラックやオーバーハングの形態がみられた.これらのブロック雪崩発生斜面やブロック雪崩発生の可能性が高い斜面の特徴から,ブロック雪崩は残雪が融雪やグライドにより遷急線から崩落して発生したと推定される.また,これらの斜面の多くは全層雪崩頻発斜面にみられる筋状地形が存在し,しかも,デブリ中に削剥物が多数混在していることからブロック雪崩は全層雪崩と同様に地形形成作用の一部を担っていると考えられる.これらを総合すると,調査地におけるブロック雪崩の発生過程は,以下の四つの段階を経るものと考えられる.すなわち,第一段階;降雪と積雪,第二段階;クラックの形成とグライドの発生,第三段階;全層雪崩の発生,第四段階;ブロック雪崩の発生,である.