著者
八木 浩司 丸井 英明 Allahbuksh Kausar Shablis Sherwali
出版者
The Japan Landslide Society
雑誌
日本地すべり学会誌 : 地すべり = Journal of the Japan Landslide Society : landslides (ISSN:13483986)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.335-340, 2010-11-25
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

パキスタン北部を流れるフンザ川右岸のアッタバードにおいて2010年1月初旬に幅1000m, 比高1000m, 斜面長1500mの規模で地すべりが発生し, 約4000万立方mの移動土塊がフンザ川河谷をせき止めた。移動体は, 青灰色細粒物質をマトリックスとした長軸方向で3-4mから10mに及ぶような岩屑層からなり, この移動体からさらに絞り出された細粒物質が地すべりマウンド上を泥流となって下流側や上流側に流れ下った。本地すべりによる犠牲者は死者19人で, そのすべてはこの泥流に巻き込まれたことによるものである。この地すべりダムは大きな岩屑層からなるため突然決壊の危険性は低いと考えられた。災害4ヶ月前に撮影されたALOS/PRISM画像の実体判読の結果, 谷壁斜面には前兆現象的な変位が認められた。このためヒマラヤなどの高起伏地域での河道閉塞を引き起こす大規模地すべりの事前把握のための衛星画像利用の可能性が示唆された。
著者
関口 辰夫 丸井 英明 秋山 一弥
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.377-387, 2003-07-15 (Released:2009-08-07)
参考文献数
23

平成12年6月18日,新潟県浅草岳でブロック雪崩災害が発生し4名の犠牲者を出した.ブロック雪崩は,浅草岳山頂北西側のヤスノ沢右支谷上流部,地すべり滑落崖の稜線付近で発生した.崩落した雪崩ブロックは筋状地形に沿って流下し,斜面下方の雪渓で犠牲者を直撃した.災害発生直後に撮影された空中写真の判読によれば,災害発生斜面の周辺では,ブロック雪崩が発生している斜面やブロック雪崩発生の可能性が高い斜面が多数みられた.判読されたブロック雪崩はいずれも災害発生斜面と同様に遷急線上から発生し,見通し角が30~42°,到達距離が90~350mとなり,到達距離や見通し角は,既往の全層雪崩や表層雪崩の見通し角や到達距離と同程度であった.また,周辺のブロック雪崩発生の可能性が高い斜面に存在する残雪の多くは,遷急線直上部に位置し,クラックやオーバーハングの形態がみられた.これらのブロック雪崩発生斜面やブロック雪崩発生の可能性が高い斜面の特徴から,ブロック雪崩は残雪が融雪やグライドにより遷急線から崩落して発生したと推定される.また,これらの斜面の多くは全層雪崩頻発斜面にみられる筋状地形が存在し,しかも,デブリ中に削剥物が多数混在していることからブロック雪崩は全層雪崩と同様に地形形成作用の一部を担っていると考えられる.これらを総合すると,調査地におけるブロック雪崩の発生過程は,以下の四つの段階を経るものと考えられる.すなわち,第一段階;降雪と積雪,第二段階;クラックの形成とグライドの発生,第三段階;全層雪崩の発生,第四段階;ブロック雪崩の発生,である.
著者
八木 浩司 丸井 英明 Allahbuksh Kausar Shablis Sherwali
出版者
公益社団法人 日本地すべり学会
雑誌
日本地すべり学会誌 (ISSN:13483986)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.335-340, 2010-11-25 (Released:2011-09-22)
参考文献数
9
被引用文献数
1

パキスタン北部を流れるフンザ川右岸のアッタバードにおいて2010年1月初旬に幅1000m, 比高1000m, 斜面長1500mの規模で地すべりが発生し, 約4000万立方mの移動土塊がフンザ川河谷をせき止めた。移動体は, 青灰色細粒物質をマトリックスとした長軸方向で3-4mから10mに及ぶような岩屑層からなり, この移動体からさらに絞り出された細粒物質が地すべりマウンド上を泥流となって下流側や上流側に流れ下った。本地すべりによる犠牲者は死者19人で, そのすべてはこの泥流に巻き込まれたことによるものである。この地すべりダムは大きな岩屑層からなるため突然決壊の危険性は低いと考えられた。災害4ヶ月前に撮影されたALOS/PRISM画像の実体判読の結果, 谷壁斜面には前兆現象的な変位が認められた。このためヒマラヤなどの高起伏地域での河道閉塞を引き起こす大規模地すべりの事前把握のための衛星画像利用の可能性が示唆された。
著者
佐々 恭二 山岸 宏光 福岡 浩 千木良 雅弘 丸井 英明
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

21世紀において地すべり危険度の軽減と人類の文化・自然遺産及びその他の脆弱な宝の保護の問題は重要性を増しており,そのための研究、調査の拡大・強化に向けた世界的な協力が緊要である.1999年12月,ユネスコ事務総長と京都大学防災研究所長の間で合意覚え書き「21世紀の最初の四半世紀における環境と持続できる開発のための鍵としての地すべり危険度軽減と文化・自然遺産保護のための研究の推進に関する協力」が交わされた.この合意を推進するため,以下の研究を実施した.1.岡山県高梁市の国史跡・備中松山城の変形し始めている基礎岩盤に差動トランス型伸縮計とクラック変位計を開発・設置し,岩盤変位の精密計測を開始した.2.ユネスコ世界遺産の中で最も著名で,大規模な岩盤崩壊の地形の真上に位置し,クラックや小崩壊などの危険な兆候を示しているペルーのマチュピチュ遺跡の調査と斜面変動の高精度計測のため簡易伸縮計を開発し,11月に現地に持ち込み設置した.3.日本学術会議において2001年1月15日〜19日にかけて,UNESCO/IGCP Symposium on Landslide Risk Mitigation and Protection of Cultural and Natural Heritageを開催し,19カ国,57名が参加し,研究発表・研究推進の打合わせを行った.国際的な地すべり研究の枠組み設立のための「2001年東京宣言:Geoscientists tame landslides」を採択した.佐々が報告したマチュピチュ遺跡の地すべり調査結果と伸縮計観測結果は英国BBC,米国CNN,ロイター通信社,読売新聞等で世界的に報じられ,地すべりの危機に晒される文化遺産に対する国際的な関心を高めることに寄与した.なお,同シンポで発表された論文の中で優れたものを編集しSpringer Verlagより単行本として出版予定である.
著者
海野 徳仁 平田 直 小菅 正裕 松島 健 飯尾 能久 鷺谷 威 笠原 稔 丸井 英明 田中 淳 岡田 知己 浅野 陽一 今泉 俊文 三浦 哲 源栄 正人 纐纈 一起 福岡 浩 渥美 公秀 大矢根 淳 吉井 博明
出版者
東北大学
巻号頁・発行日
2008

臨時余震観測から本震時には西傾斜の震源断層が主に活動したが、それと直交する東傾斜の余震活動もみられた。震源域直下の深さ30~40kmには低速度域が広く存在しており、そこから3本の低速度域が地表の活火山にまで続いていた。GPS観測データから本震時すべりは岩手・宮城県境付近で最も大きかった。本震後の顕著な余効すべりは震源断層の浅部延長で発生し、地震時すべりと余効すべりは相補的である。強震動データでは0.1~0.3秒の短周期成分が卓越していため震度6弱の割には建物被害が少なかった。