著者
秋山 学 秋山 佳奈子
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

聖書学の「予型論」を活用した本企画では, 遠く東洋日本におけるキリスト教伝来以前の文化伝承のうちに「予型」を見出し, それを照射する「光源」としてビザンティン典礼を措定するという2段階での研究を推進した.代表者による慈雲尊者飲光の研究により, わが国の悉曇学あるいは習合神道のうちに一つの予型が, また分担者による『源氏物語』注釈史研究を通して, 四辻善成のうちに実証主義的注釈家のあり方が見出されたと考える.
著者
秋山 学 秋山 佳奈子
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

慈雲の『法華陀羅尼略解』には唯識学的注記が認められる.彼は『雙龍大和上垂示』において,唯識は八識を説くが,密教では「菴摩羅識」をも説くと述べる.慈雲は,天御中主尊が菴摩羅識に当たるとするが,この尊は高天原の神であり,彼の『神儒偶談』には「高天原虚空観」が述べられる.「菴摩羅識」は法界体性智に当たるが,『論語』15-42には,孔子が瞽者を敬ったとある.孔子は瞽者を儒教尚古主義の体現者と認識していたが,瞽者は眼識をも欠くため,彼らの生は「菴摩羅識」に基づく.こうして慈雲は,儒教尚古主義と「高天原虚空観」「法界体性智」に通底する地平,つまり儒・仏・神・密の結節点を『法華陀羅尼略解』に説いたと言える.