著者
堀 元 秋田 次郎 三宅 充展 鴨池 治 芹澤 成弘 林山 泰久
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

1)非家父長的利他性、すなわち、他者の判断基準を尊重した上で、他者が望ましい状態にあることを自らも望ましいとする他者への配慮、に由来する効用の相互依存関係の分析を非定常モデルへ拡張した。2)最適な自己資本比率規制を分析するために、自己資本比率が銀行収益に及ぼす効果を検討し、銀行の期待自己資本収益率と銀行の破綻確率の間にはトレードオフが存在することを証明した。3)アロンソ型離散土地市場モデルを分析し、競争均衡を計算するための有限アルゴリズムを導出した。4)地球温暖化問題に対処する「京都メカニズム」が京都議定書でとりまとめられたが、京都メカニズムには先進国と発展途上国の利害対立等、多くの問題が指摘されている。京都メカニズムの問題のうち特に争点となっているCDMについて分析を行った。5)環境を利用することから生じる総価値を補償的偏差および等価的偏差の概念で定式化し、総価値が利用価値および非利用価値の加法分離形で表現できることを示し、利用価値は、直接的利用価値および純間接的利用価値に分離可能であることを示した。6)制度・経済システムといったものに付随する「本質的な不確実性」は、伝統的なリスクによる分析を越えるものとして、ナイト流不確実性として捉えることが出来る。不確実性が高まれば留保価格が低下する、というこれまでのフレームワークでは説明できなかった主張を証明した。7)所有と経営が分離している企業とオーナーが経営上の意思決定を行うことの出来る企業を比較すると、役員に対して金銭的報酬を通じて株主の利益を追求するインセンティブが与えられているのは後者であるということを実証した。8)メカニズムに戦略的虚偽表明を防止するという条件を課した場合、純粋交換経済モデルにおいて、パレート効率性と最小消費保証条件の間にトレードオフが存在することを証明した。
著者
鴨池 治 金崎 芳輔 秋田 次郎 吉田 浩 北川 章臣
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本年度の研究では、以下の3点の実績が得られた。1.はじめに、確定拠出年金の導入は実質的には退職金の前払いであり、その導入を決断した企業は年功賃金制のような賃金後払いの方法で従業員の勤労意欲を引き出すことを(部分的に)断念したに等しい。こうした企業は勤労意欲を引き出す手段として効率賃金を採用する可能性が高いが、この方法が広汎に採用されると、労働市場は高賃金が支払われる内部市場と低賃金が支払われる外部市場に階層化し、全く同じ能力を持つ労働者の生涯効用に格差が生じることになる。2.つづいて、厚生労働省のホーム・ページから2000年8月末に「確定拠出年金企業型年金承認規約代表企業一覧」を入手した。このリストにある1,993の企業から株式公開企業520社、さらに東証1部上場企業337社を抽出した。次に、日経テレコン21の記事検索により401k年金導入の記事が掲載された企業93社を探し出した。最後に、東洋経済新報社の株価CD-ROMより新聞掲載前後の株価データを入手し、401k年金導入のニュースに対して、株価(企業価値)がどう変化するかのイベント・スタディを行った。その結果、確定拠出年金導入の公表は当該企業の株価を高める効果は確認できなかった。3.最後に、『家計調査』の2002年から2006年までの貯蓄・負債編の公表集計表のデータを用いて日本における確定拠出年金制度の家計貯蓄に与えた効果を回帰分析した。年金型貯蓄/総貯蓄比率を被説明変数とした回帰では、勤労者でより所得の大きな世帯で拠出限度額の改定が総貯蓄に占める年金資産額を増やす可能性が示された。しかし、総貯蓄/所得比率を被説明変数とした回帰では勤労者でより所得の大きな世帯で、拠出限度額の改定が総貯蓄を侵食している可能性が示されている。いずれのケースにおいても、所得の小さな世帯においては確定拠出年金制度が年金型貯蓄および、総貯蓄を増加させているという効果は確認できなかった。