著者
中塚 幹也 秦 久美子 江國 一二美 高馬 章江 江見 弥生
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.404-411, 2005-07

性同一性障害の外来診療システムに関して当事者に自記式質問紙調査を行った。調査期間は2003年9月〜2004年2月, 対象は同意の得られた108名で, Female to Male Transsexuals(FTM)症例が68名, Male to Female Transsexuals(MTF)症例が40名であった。診察券上の氏名や性別の記載の変更は可能としているが, 性別を変更していた症例では, 診察券に満足している症例が多かった(FTM症例82.4%, MTF症例62.3%)。診察室への呼び込みは, 戸籍上未改名の症例では, 通称名や姓のみで呼ばれることを希望する症例が多かった。待合に満足していた症例は, 受付, 会計, 薬局, 各診察室とも70%以上であったが, FTM症例では産婦人科の待合が「恥ずかしい, 居づらい」という意見が多く, 満足している症例は34.6%と低率であった。トイレに関して満足している症例は, FTM症例, MTF症例とも30%台であり, 「男女共用にして欲しい」との意見がみられた。また, FTM症例では, 「男性用トイレの個室を増やして欲しい」「男性用トイレの個室に汚物入れを置いて欲しい」などの意見があった。これらの結果を検討し解決することで, 外来診療システムの改善につなげる必要がある。