著者
中塚 幹也 江見 弥生
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.278-284, 2004-07
参考文献数
16
被引用文献数
3

性同一性障害(GID)329症例に対し,思春期の問題点を明らかにすることを目的として自記式質問紙調査,臨床解析を行い,female to male(FTM)症例とmale to female(MTF)症例とに分けて検討した。小学校入学以前に性別違和感を自覚し始めることが多いFTM症例に比較し,MTF症例では発症が遅い症例が多かったが,ほとんどが思春期以前に性別違和感を自覚していた。思春期に多い問題行動では,不登校が全体の29.2%,自殺念慮が74.8%,自殺未遂・自傷行為も31.0%と高率であった。また,二次的に生じたと考えられる強迫神経症やうつ状態などの精神科的合併症も17.9%にみられ,特にMTF症例で高率であった。このような思春期の問題を解決するためには,学校保健の役割は重要であり,性別違和感のある児童が早期に相談しやすい態勢を整えることで医療施設へ紹介可能となる。また,的確な診断が行われた症例には,二次性徴を抑制するなどの医学的介入で,種々の問題を回避できる可能性がある。
著者
中塚 幹也 秦 久美子 江國 一二美 高馬 章江 江見 弥生
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.404-411, 2005-07

性同一性障害の外来診療システムに関して当事者に自記式質問紙調査を行った。調査期間は2003年9月〜2004年2月, 対象は同意の得られた108名で, Female to Male Transsexuals(FTM)症例が68名, Male to Female Transsexuals(MTF)症例が40名であった。診察券上の氏名や性別の記載の変更は可能としているが, 性別を変更していた症例では, 診察券に満足している症例が多かった(FTM症例82.4%, MTF症例62.3%)。診察室への呼び込みは, 戸籍上未改名の症例では, 通称名や姓のみで呼ばれることを希望する症例が多かった。待合に満足していた症例は, 受付, 会計, 薬局, 各診察室とも70%以上であったが, FTM症例では産婦人科の待合が「恥ずかしい, 居づらい」という意見が多く, 満足している症例は34.6%と低率であった。トイレに関して満足している症例は, FTM症例, MTF症例とも30%台であり, 「男女共用にして欲しい」との意見がみられた。また, FTM症例では, 「男性用トイレの個室を増やして欲しい」「男性用トイレの個室に汚物入れを置いて欲しい」などの意見があった。これらの結果を検討し解決することで, 外来診療システムの改善につなげる必要がある。