著者
櫻井 湧哉 内海 方嗣 近藤 碧 柚木 宏介 德永 尚之 表 梨華 稲垣 優
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.83, no.8, pp.1527-1532, 2022 (Released:2023-02-28)
参考文献数
28

膵intraductal oncocytic papillary neoplasm(IOPN)は膵癌取扱い規約(第7版)でIPMNなどと同列にあたる膵癌前病変の一つとして分類された.今回われわれはIOPNの1切除例を経験したので,疾患分類の変遷など文献的考察を加えながら報告する.症例は47歳の女性で,主訴は特になかった.1年前に検診の腹部超音波検査で膵頭部に膵嚢胞性病変を指摘され,近医で分枝膵管型IPMNと診断された.翌年に壁在結節の増大を認め,high risk stigmataに該当し,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織所見では,膵頭部で嚢胞状に拡張した分岐膵管や類円形の核を有する腫瘍細胞の乳頭状増殖を認めた.免疫組織化学的染色を併施し,IOPNと最終診断した.経過は良好で術後14日目に退院した.
著者
稲垣 優 田辺 俊介 吉田 亮介 有木 則文 常光 洋輔 大塚 眞哉 三好 和也 大崎 俊英 淵本 定儀 湯村 正仁 堀 圭介 友田 純
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.46, no.11, pp.653-657, 2005 (Released:2006-11-24)
参考文献数
9
被引用文献数
2 2

患者は67歳女性. 主訴は呼吸困難. C型肝硬変症にて当院内科にて治療中, 胸腹水貯留にて入院. 胸水に対し胸腔ドレーンを挿入したが, 1.5l/dayの胸水を認め, ドレーンクランプにて呼吸困難を生じ, 胸水コントロールのため, 当科紹介となった. Child-Pugh score9点Bであった. CTにて右胸腔内に著明な胸水貯留を認め, 肺実質は虚脱していたが, 腹水は少量であった. 以上より, 胸腔静脈シャントの手術を行った. 手術は腹腔静脈シャント用のDenver shuntシステムを用いた. 術後経過は当初300回/dayでポンプを押していたが, 胸水の改善が見られず, 回数を増やすと共に胸水穿刺を適時行うことにより, 胸腔内で肺の再膨張が見られるようになり, 患者の呼吸状態も改善し, 現在ポンプのみにて平衡状態が保たれている. 末期肝硬変患者で腹水が少量で, 難治性胸水を認める症例では積極的に胸腔静脈シャントを留置することにより, 患者の状態が改善できると考えられた.
著者
木村 裕司 大塚 眞哉 濱野 亮輔 岩川 和秀 稲垣 優 岩垣 博巳
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.916-920, 2012 (Released:2012-10-25)
参考文献数
17
被引用文献数
1

症例は既往歴のない36歳の女性.平成20年5月,月経初日の夕食後に腹痛が出現,翌日に腹痛の増悪と嘔吐を認めたために近医を受診.腹部CTにて血性腹水と小腸の拡張を認め,当院婦人科紹介となる.子宮・付属器に異常なしとのことで,回盲部の炎症による小腸イレウスとして外科紹介となった.右下腹部に反跳痛を認めたため,緊急手術を施行した.手術所見では,回腸末端部が相互の強固な癒着性変化にて一塊となっており,潰瘍穿通による瘻孔形成によるものと判断した.病変部口側にも線維化病変を数カ所認めたため,Crohn病と診断,回盲部切除を施行した.術後病理組織検査にて腸管子宮内膜症と診断され,本症例のイレウスは異所性子宮内膜症による回腸狭窄と考えられた.回腸子宮内膜症によるイレウスはまれな病態ではあるが,成人の女性のイレウスでは鑑別すべき疾患であると思われる.