著者
正木 直樹 深沢 学 外山 秀司 川原 優 稲毛 雄一
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.403-407, 2013

遠位弓部大動脈瘤の手術のさいに,末梢側吻合に苦慮することがしばしば経験される.そのため,末梢側吻合を省略したオープンステント法が考案された.さらに最近はステントグラフトによる血管内治療の普及も目覚ましい.ただし,これらの治療における遠隔期のエンドリーク,ステントmigrationは依然として残された問題である.今回われわれはオープンステント法術後のエンドリーク,ステントmigrationに対する開胸下下大動脈置換術を3例経験した.瘤中枢側の剥離は,瘤内のグラフトを遮断できる程度で十分であり,それほど時間を要さなかった.2例ではグラフト長が十分であり,ステント除去後に直接下行大動脈に吻合可能であった.残り1例は,ステントを除去後,グラフトを延長し,下行大動脈に吻合した.視野は良好であり,吻合や止血に難渋することはなかった.術後合併症もなく,良好な結果が得られた.血管内治療の進歩が目覚ましい現在においても,何らかの理由で血管内治療を施行できない症例もあると考えられる.開胸下下行大動脈置換術もオープンステント法術後のエンドリークに対する治療法の選択肢になりえる手技であると考えられる.