著者
金 哲樹 内田 徹郎 外山 秀司 前川 慶之 宮崎 良太 貞弘 光章
出版者
特定非営利活動法人 日本血管外科学会
雑誌
日本血管外科学会雑誌 (ISSN:09186778)
巻号頁・発行日
vol.22, no.7, pp.973-975, 2013 (Released:2013-12-26)
参考文献数
6

要 旨:症例は80歳男性,バイク事故にて受傷.右肩から頸部にかけて増悪する腫脹あり,右上腕動脈の拍動は消失.CTにて右鎖骨下に広範囲血腫形成と右鎖骨下動脈よりの造影剤漏出を認め,外傷性右鎖骨下動脈損傷の診断で当科搬送.来院時全身状態は安定,橈骨動脈・上腕動脈とも拍動は触知せず.緊急修復術の方針となり,整形外科と合同で手術開始.まず出血コントロールのため胸骨正中切開より腕頭動脈・右鎖骨下動脈をテーピング.右鎖骨下から右腋窩動脈もテーピング.その後整形外科にて鎖骨直上より骨折骨片を除去しながら損傷部位を展開.鎖骨下動脈はほぼ完全に断裂していた.椎骨動脈を介した出血があり,断裂部を明らかにしたところでその近傍で血管遮断し直し無血視野を確保.断裂部をトリミング後,直接吻合を行い修復.鎖骨骨折部を整形外科で修復,手術終了とした.経過は良好で,CTで鎖骨下動脈修復部の開存と末梢の良好な造影を認めた.
著者
正木 直樹 深沢 学 外山 秀司 川原 優 稲毛 雄一
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.403-407, 2013

遠位弓部大動脈瘤の手術のさいに,末梢側吻合に苦慮することがしばしば経験される.そのため,末梢側吻合を省略したオープンステント法が考案された.さらに最近はステントグラフトによる血管内治療の普及も目覚ましい.ただし,これらの治療における遠隔期のエンドリーク,ステントmigrationは依然として残された問題である.今回われわれはオープンステント法術後のエンドリーク,ステントmigrationに対する開胸下下大動脈置換術を3例経験した.瘤中枢側の剥離は,瘤内のグラフトを遮断できる程度で十分であり,それほど時間を要さなかった.2例ではグラフト長が十分であり,ステント除去後に直接下行大動脈に吻合可能であった.残り1例は,ステントを除去後,グラフトを延長し,下行大動脈に吻合した.視野は良好であり,吻合や止血に難渋することはなかった.術後合併症もなく,良好な結果が得られた.血管内治療の進歩が目覚ましい現在においても,何らかの理由で血管内治療を施行できない症例もあると考えられる.開胸下下行大動脈置換術もオープンステント法術後のエンドリークに対する治療法の選択肢になりえる手技であると考えられる.