著者
佐藤 重穂 前藤 薫 田端 雅進 宮田 弘明 稲田 哲治
出版者
樹木医学会
雑誌
樹木医学研究 (ISSN:13440268)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.75-80, 2004-09-30
被引用文献数
1

ニホンキバチの成虫脱出数が樹木個体によってばらつく要因を明らかにするために,スギの間伐放置木からのニホンキバチの羽化成虫数を調べ,あわせて産卵痕数,孵化幼虫数を調べた.産卵強度および孵化幼虫密度と羽化成虫密度との間にはそれぞれ正の相関があった.寄主木の胸高直径,含水率,寄生蜂オオホシオナガバチの寄生率とニホンキバチの各ステージの密度との関係を調べたところ,胸高直径と含水率が羽化成虫密度との間に正の相関があり,寄生蜂の寄生率はニホンキバチの羽化成虫密度との間に相関がみられなかった.含水率は孵化率,羽化率とも正の相関があった.胸高直径,含水率,産卵強度,孵化幼虫密度,羽化成虫密度の間の因果関係を仮定してモデルを作り,解析した結果,これらの関係を説明することができた.この結果から,寄主木サイズが含水率を通じてニホンキバチの羽化成虫数を決める要因の一つとなっていると考えられた.