著者
稲葉 幸雄 吉田 智彦 杉山 信男
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.431-434, 2007 (Released:2007-07-24)
参考文献数
16

代表的な促成栽培用品種である‘とちおとめ’,‘女峰’および‘とよのか’を用いて,主茎腋芽の発達に及ぼす定植後の温度と施肥量の影響を検討した.植物体は温度条件と施肥量を各2段階に変え,これらを組み合わせた4条件下で栽培した.頂花房直下の腋芽を第1節腋芽とし,第4節までの腋芽のタイプを定植後52日目に調べた.腋芽は休眠芽,一次側枝,ランナーに分類した.3品種とも第1節腋芽はすべて一次側枝に発達した.いずれの品種でも第3,4節の腋芽は低温下では休眠芽となるものが多かったが,高温下ではランナーとなるものが増加した.‘とちおとめ’,‘女峰’では施肥量が増えると休眠芽の割合が減少したが,‘とよのか’では施肥量の影響は小さかった.第2節では,休眠芽の割合は低く,高温下でランナーの割合が増加した.施肥量が増えると,‘とちおとめ’では一次側枝の割合が増加したが,他の2品種では一次側枝の割合はほとんど変化しなかった.以上の結果は,第2節の腋芽の発達を調節するため,品種によって温度や施肥条件を変える必要があることを示唆している.
著者
稲葉 幸雄 吉田 智彦
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.219-225, 2006-09-15
参考文献数
27
被引用文献数
2 6

栄養繁殖作物のイチゴでは,限られた育種材料間での交配を繰り返すため近親交配が問題となる.そこで,近年育成されたイチゴ品種の近交係数を計算した.また,近交係数と収量との関係を調べた.近交係数の計算は推論型言語Prologとパーソナルコンピューターを利用した手軽な処理系で計算プログラムを作成した.交雑実生の近交係数と実生の選抜率との間に相関関係は認められなかった.栃木県農業試験場栃木分場の育成系統(3次選抜系統)の近交係数と収量の関係を調べたところ,-0.37(危険率1%)の有意な負の相関が認められた.また,イチゴでは近交係数が0.3程度までであれば,近交弱勢による収量の低下は見られないことが明らかになった.近年育成されたイチゴ品種の近交係数は,一季成り性品種では0.2を超えるものが多く,'とちおとめ','章姫','さがほのか','あまおう','さつまおとめ','ひのしずく','やよいひめ'はそれぞれ0.261, 0.222, 0.257, 0.213, 0.257, 0.247, 0.346であった.一方,四季成り性品種では'サマープリンセス'と'きみのひとみ'の2品種がが0.183と0.195でやや高い値であったが,それ以外はいずれも0.1以下であった.代表的な一季成り性品種15品種の総当たり交配による雑種の近交係数を計算した結果,自殖を除いた近交係数の値は0.067〜0.440で平均は0.210となり,近親交配の程度が高くなることが明らかになった.
著者
稲葉 幸雄 家中 達広 畠山 昭嗣 吉田 智彦
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.209-215, 2007-04-15
被引用文献数
1

夜冷短日処理によって8月上旬に頂花房を分化させた苗に対して,継続して夜冷処理を行なうことで頂花房の花芽発育と一次側花房の花芽分化を同時に促進させる育苗法を検討した.頂花房分化後に8日〜10日の夜冷処理中断期間を設けることで,栄養成長が促進され頂花房着花数が増加した.また夜冷処理中に追肥を行うことで一次側花房の花芽分化が促進されることが明らかとなった.本処理方法で一次側花房を分化させた苗を9月上旬に定植することによって,10月上中旬から頂花房の収穫が可能となり,一次側花房も頂花房に引き続き連続的に収穫できることから年内収量が大幅に増加することが明らかとなった.