著者
稻垣 誠二
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.46, no.544, pp.35-36, 1939-01-20

該化石は岩手縣二戸郡金田一村湯田産で, その産出層位は大塚學士の下部門ノ澤層群である。標本の保存状態は比較的に良く, 2個體が重なり合つて産す。上部のものは腹部の形態から雌と確認されるが, 下部の性別は判然しない。兩標本とも同一種に屬し, 相模灣以南臺灣に到る本邦近海に産する Scylla serrata (FORSKAL)「ノコギリガザミ」に酷似して居る。亦甲殻の外形は Portunus trituberculatus (MIERS)「ガザミ」のそれにも似て居る。分類上重要な螯脚長節の前縁に於ける棘數が不明であるが, 種々の點より見て本化石標本を新種と認め, 之にScylla miocenica INAGAKI なる新名を與へた。