著者
兼久 勝夫 Awan Rustamani Maqsood 鄭 文儀 積木 久明 白神 孝
出版者
岡山大学資源生物科学研究所
雑誌
岡山大学資源生物科学研究所報告 (ISSN:0916930X)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.17-26, 1995

Aphids sometimes severely infest wheat plants, mainly sucking phloem sap and disrupting tissues, and in a few cases act as virus vectors. There are resistant and susceptible varieties of wheat against aphids. DIMBOA (2,4-dihydroxy-7-methoxy-1,4-benzoxazin-3-one) is a substance causing resistance to animals including aphids. The change in the amounts of DIMBOA with growth in eight wheat varieties was estimated in 1990 and 1991. Wheat seeds were sown at mid-November in the former year and harvested in mid-June. Aphids appeared from early April, increased with the growth of the wheat, and finally decreased with the senescence of the wheat. Rhopalosiphum maidis appeared early in the season, R. padi appeared late, Schizaphis graminum and Sitovion akebiae appeared intermittently in the season. S. graminum appeared more frequently on wheat than barley. DIMBOA was detected from wheat but not from barley. Gramine (N,N-dimethyl-indole-3-methanamine) was detected from barley, and is known as an important resistance substance. However gramine could not be detected in wheat. DIMBOA was found in higher amounts in young wheat, and gradually decreased with growth. A clear relationship between the aphid population and DIMBOA amounts could not be observed. However, all the wheat varieties used in this experiment seemed to have resistance against aphids. The resistance was compared with barley susceptible lines. DIMBOA was presumed to share the property of resistance with aconitic acid in wheat.コムギもオオムギと同様に系統・品種によってアブラシによる寄生の程度に差がみられた。数百のコムギ品種について、寄生程度の調査を1989年に予備的に行い、選別した8品種について、1990年と1991年にコムギの抵抗性物質とされているDIMBOAの消長を調べた。寄生程度の比較調査は1989年から1992年まで調べ、年と場所による変動を調べた。数千のオオムギの系統間においてはアブラムシ類の寄生数で百倍以上の差があり、抵抗性と感受性の系統を容易に選別できている。しかし、コムギにおいては数十倍の寄生数を示す系統は見出せなかった。系統間に年と場所での抵抗性と感受性の差が見られても、遺伝的であることが確認された系統はなかった。オオムギと比較して、供試した数百のコムギ系統の中には、アブラムシの寄生が非常に多い感受性系統はなく、供試した全てが多少とも抵抗性の形質を示した。コムギの抵抗性物質であるDIMBOAは冬期2月下旬で約1μg/g新鮮葉の含量であり、生育に伴って減少した。減少の程度は系統間で差が余りなかった。換言するとDIMBOAのない、あるいは極端に少量の系統はなく、全ての系統で抵抗性の一因となっていると考察された。コムギにおいては、オオムギで顕著な抵抗性物質と考えられているインドールアルカロイドのグラミンは検出されなかったが、オオムギで検出されなかったDIMBOAが顕著な抵抗性成分として検出され、これによって両ムギの質的な差異が示された。コムギはもう一つの抵抗性物質である水溶性のアコニット酸をオオムギの約10倍も含有しており、コムギではDIMBOAとアコニット酸の両者がアブラムシ抵抗性物質として作用していると考えられた。
著者
武 智広 積木 久明 篠田 一孝 吉田 敏治
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.177-182, 1994-08-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
16
被引用文献数
2 1

発育段階の異なるアズキゾウムシを用いて過冷却点,体重,炭水化物含量,低温下での生存に及ぼす低温順化の影響について調べた。1) 低温順化により幼虫,蛹の低温での生存期間が延長した。幼虫の高齢のものほど顕著であった。2) 幼虫,蛹,成虫の過冷却点はいずれも-20°Cより低かったことから,アズキゾウムシは一時的にかなりの低温に耐えられると考えられる。3) 幼虫,蛹で低温順化開始後グルコース,トレハロースといった糖の蓄積がみられたが,過冷却点はほぼ一定であった。また,低温順化後,0°Cに置かれた幼虫で糖やグリコーゲン含量の減少がみられた。4) 低温順化後,最も長く0°Cで生存したのは15日齢幼虫,次いで7日齢幼虫であった。それら幼虫の生存日数は最長で35日と20日であった。5) 以上の結果から,グリコーゲンや糖の蓄積が多かった老齢幼虫が越冬に適していると考えられる。
著者
武 智広 積木 久明 篠田 一孝 吉田 敏治
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.177-182, 1994
被引用文献数
1

発育段階の異なるアズキゾウムシを用いて過冷却点,体重,炭水化物含量,低温下での生存に及ぼす低温順化の影響について調べた。<br>1) 低温順化により幼虫,蛹の低温での生存期間が延長した。幼虫の高齢のものほど顕著であった。<br>2) 幼虫,蛹,成虫の過冷却点はいずれも-20&deg;Cより低かったことから,アズキゾウムシは一時的にかなりの低温に耐えられると考えられる。<br>3) 幼虫,蛹で低温順化開始後グルコース,トレハロースといった糖の蓄積がみられたが,過冷却点はほぼ一定であった。また,低温順化後,0&deg;Cに置かれた幼虫で糖やグリコーゲン含量の減少がみられた。<br>4) 低温順化後,最も長く0&deg;Cで生存したのは15日齢幼虫,次いで7日齢幼虫であった。それら幼虫の生存日数は最長で35日と20日であった。<br>5) 以上の結果から,グリコーゲンや糖の蓄積が多かった老齢幼虫が越冬に適していると考えられる。