- 著者
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篠田 一孝
吉田 敏治
- 出版者
- 日本応用動物昆虫学会
- 雑誌
- 日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
- 巻号頁・発行日
- vol.29, no.1, pp.14-20, 1985-02-25 (Released:2009-02-12)
- 参考文献数
- 20
- 被引用文献数
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岡山県のアズキの主産地である英田郡作東町で,秋アズキ畑で発見される成虫数と累積産卵数の季節的変化およびアズキの被害状況について調べた。あわせて,殺虫剤散布が畑内の成虫数と累積産卵数の季節的変化に与える影響と慣行的に行われている天日乾燥がアズキ粒内のアズキゾウムシ幼虫に及ぼす殺虫効果についても調査した。1) アズキ畑への成虫の飛来は8月中旬から始まり,11月初旬まで連続的にみられた。この間,8月下旬から9月上旬および10月初旬に多くの成虫の飛来があったが,畑で羽化した個体はなかった。2) 飛来成虫による莢への産卵は9月上旬から始まり,10月中旬までみられた。収穫時の1莢当りの平均産卵数は2.06卵で,このうちアズキゾウムシ幼虫が食入した粒数は1莢当り0.85粒であった。3) 莢に産下された卵の時点から孵化した幼虫が粒内に食入した直後までの生存率は0.47という低い値であった。食入を受けたアズキ1粒当りの幼虫密度は1.18であった。4) 殺虫剤散布を行わない場合,収穫したアズキのうち粒数比で約78%は健全粒であったが,約15%はアズキゾウムシの食入を受けていた。この値は何らかの防除手段をとらなければ,アズキゾウムシによるアズキの被害はきわめて大きいことを示している。それに対し腐敗粒およびアズキサヤムシガによる食害粒の割合はそれぞれ0.5, 7.2%と低かった。5) アズキゾウムシは地表から15∼20cmの高さにある莢に最も多く産卵し,被害は畑の中央ほどその縁に比べより大きかった。6) 殺虫剤(MPP)散布を行った場合,畑内の成虫数および累積産卵数は,殺虫剤散布を行わなかった場合のそれらに比べ顕著に低かった。7) 11月上旬の慣行的天日乾燥方法ではアズキ粒内のアズキゾウムシ幼虫に対する殺虫効果は認められず,粒の乾燥効果があるだけであった。