著者
穗坂 路男 星山 佳治
出版者
The Showa University Society
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.522-529, 1996

在宅酸素療法home oxygen therapy (H.O.T.) 患者のquality of life (Q.O.L.) を改善する目的で, diazepamを投与し, その効果をdouble-blind, crossover, Placebo-diazepam clinical tria1によって評価した.調査対象は, H.O.T.導入後3カ月をすぎ, 呼吸不全状態の安定期にあるI型呼吸不全の患者とし, diazepam及びplacebo 0.1~0.2mg/kgを1カ月毎に計4カ月間double blindで投与した.あらかじめ, 性格特性, 人格特性等を心理テストにて把握するとともに, 様々な身体的, 精神的検査を, 各1カ月の前後にそれぞれ行った.その結果, diazepam投与の前後において, 呼吸機能の有意な変化は認められなかったが, 呼吸困難感は有意に改善した.また, 患者の抑うつや不安感に関しては, Placebo投与群では増悪傾向が見られたにもかかわらず, diazepam投与群においては改善傾向が認められた.同様に, Q.O.L.評価においてもplacebo投与群では増悪傾向がみられたにもかかわらず, diazepam投与群は改善傾向が認められた.また, placebo投与群では身体的機能障害と精神的機能障害ともに増悪傾向が見られたのに対し, diazepam投与群では身体的機能障害は増悪傾向がみられたが, 精神的機能障害は改善の傾向が認められた.また, diazepamを投与した結果, 呼吸困難感が改善した患者群と不変増悪の患者群の2群の間で, 判別分析を行った結果では, 呼吸困難感が強く, MMPIの1ie scaleおよびY-G性格検査のthinking extroversionの高い患者ほど, diazepam投与による呼吸困難感軽減の効果が現れやすいことが示唆された.